アンドロイドが人権を得るまでになった未来の世界で、孤独な吸血鬼が目覚めるお話。
いわゆるSFであると同時に、ファンタジーでもある短編です。
人と人との交流というか、そこに芽生える絆のようなものを描いたお話。
いや、厳密に『人』と呼べるかどうかは怪しい……というか、なにせ実在自体が危ぶまれる吸血鬼と、まだ完全な自立意思を持たないアンドロイドのお話で、しかしそれこそがこの物語の最大の魅力。
どこか世界からこぼれ落ちた存在であればこそ、ふたりのその交流がとても胸に響きます。
なお本作は、同じ作者さんの別作品『機械人類は濃藍の夜の夢を見ない』の、番外というか別バージョンとでもいうべき作品です。
設定とストーリー自体はまったく同一なのですが、吸血鬼青年の視点から描かれている(『機械人類は〜〜』の方ではアンドロイドの少女が視点保持者)、というもの。
どちらから先に読んでも差し支えない内容と思われますので、読み比べてみるのもよいかもしれません。
優しいハッピーエンドが胸に心地よい、とても優しいお話でした。