正体不明の不思議なお兄さんと、その彼と幼い頃から付き合いのある少女のお話。
ラブコメ的な掛け合いが楽しいショートショートです。
あからさまに恋心を抱きながら、どうにかそれを否定しようと空回る少女のモノローグ。
お兄さんの造形が素敵でした。
「近所の憧れのお兄さん」という身近な立ち位置でありながら、でも明らかに尋常の人間を超越した存在であること。そしてイケメン。なんやかや主人公に好意が向いているところ。そして、創作であることを踏まえた倫理としては全然セーフであるものの、単純に機械的に判定した場合、間違いなく法的にアウトになるであろう年齢差の設定!(好き)
分量もコンパクトなのでサクッと読めちゃう、甘酸っぱい恋のお話でした。
にいにが普通でないことに気づいているのが少女だけなわけですが、皮肉なことにそういった常識的な感覚によって異質さにのめり込んでしまうという。世の中には説明のつかないことなんてものが話題に上がったりもしますけれど、多くの人はそんなことを普段から気にせず過ごしている。例えば研究に没頭し生涯をそのことに捧ぐような人と少女の心情は近しいものがあり、周囲とは生き方も異なる。そのような少女もにいにに異質さを見出しながら最後にはそれが「人」であり淡い感情をどこかに期待する。にいにもまた少女の好意に気付きながら思惑はどこか不穏でもあります。その先が描かれてはおらず何やら意味深な存在が登場して終わる。ここで描きたかったのはにいにと少女の関係性が主だと思いますが、にいにの正体や少女のこの先も気になるところ。