地獄のような家庭環境に生まれた、顔の良い少年のお話。
壮絶かつ凶悪な現代もののドラマです。何が壮絶ってもう主人公の生い立ちが……。
およそ生き地獄と呼ぶにふさわしい家庭環境から、救われる……といってはニュアンスが違うのですけれど、とにかく人間らしい生活を取り戻す物語。
男と男の関係性、というか、男から男への憧憬・情愛・執着のようなものが描かれており、そういうのが好きな方には自信を持ってお勧めできる作品です。たまらんやつでした。
好きなのは主人公の顔が良いところ。
もっというなら、その「顔の良さ」の使われ方であったり、主人公の自覚の仕方であったり。
この「顔が良い」という要素が、単純にキャラの魅力づけとしてではなく、人物の根幹そのものを成していること。
これが読んでいてもう本当に心地よくって大好き。
こればっかりは説明が難しいというか、ぜひ作品本編で味わってみて欲しいです。
ハードでアウトローな地獄の中に、言葉にできない情動が山ほど詰まった作品でした。
名も持たず性奴隷のような暮らしをしていた少年がヤクザと出会い自分の価値に気づきアウトローの世界で成長していく、言わばシンデレラストーリーのロジックです。少年は埋もれた原石であり出会いによって磨かれるわけですが進んだ道を思えば一般的な幸福感からは逸脱したものです。その価値は少年自身にしかありません。そもそも成長というよりは持って生まれた性質が深化したというのが正しいのでしょうか。暗部のカリスマ的なキャラクター造形からは大塚さんのご趣味を垣間見た気がします。
今作は以前に大塚さんが書かれた作品との繋がりがあり、それらを読まれてから、或いはこちらを読んで他を読まれるとまた感想も違ってくるかと思います。少年の至る道、恩人の背景など、彼らの生き様をもっと見ていたいという方は是非。