3章目
——それからほどなくして、また国中に大飢饉がおこりました。
夜、今度こそは、とおかみさんは父親に言っているのが聞こえました。
「また全部食べちゃって、あとパンが半分のかたまりしか残ってないよ、それでおしまいだ。子供たちには、いってもらわなくちゃ。森のもっと遠くへ連れてくんだよ、二度と帰ってこれないようにね。他に助かる道がないじゃないか」
父親は、大好きな子供たちが可哀想で「もうそんなことはやめよう」と言おうとしたが、おかみさんは父親の言うことすることをなにも聞く耳を持ちませんでした。なのでまたも、おかみさんに従うしかありませんでした。
しかし、そんな話をお腹が空いて目が覚めてしまったグレーテルが、聞いてしまっているではありませんか。グレーテルの顔はくしゃくしゃになり、今にも泣きそうです。
そんな妹を見たヘンゼルは、
「泣くなよ、グレーテル。静かに眠れ。神様が助けてくれるよ」
と自分も泣きたい気分の中、悲しそうな妹に声をかけ慰め、不安の中眠りにつきました。
また、朝早くおかみさんは来て、子供たちをベットから連れ出しまたもパンを渡しましたが、それは前よりもっと小さいものでした。
家を出てヘンゼルは、木の棒で道標となる線を引きながら歩いていました。
「ヘンゼル、どうしておまえはそんなに腰を曲げながら歩くんだい?」
線を引くために不自然な体勢のヘンゼルに父親が言いました。
「いや〜腰が痛くてね」
「あんたはいくつだい」
子供とは思えないヘンゼルの言葉におかみさんが笑いながら返し、その場に笑いが起こりました。
まぁ、笑い合えるのも今だけなんですけどね———
グリム童話を救いたい 橋本 愛佳 @kota_suka
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