勇亡者さまの、よもやまクエスト。

文遠ぶん

【ギフトお礼】勇亡者:創作裏話

こんにちは、文遠です。最近うれしいレビューもいただいた「勇亡者」ですが、さらにうれしいことにギフトのリクエストにて「勇亡者の創作裏話」というお題をいただけたので少し書いてみようと思います。


☆当時の投稿状況を振り返る

※リアルの話も含む。物語やキャラについての裏話は次の見出し星へ※


久々に資料を開いてみると、一番古い日付は2018年のものがあってびっくりしました。最初は公開するつもりはなく、ぽつぽつと家でひっそり書いていた思い出があります。小説投稿サイトもなろうとカクヨムしか知らないし、たぶん流行ものとは違う路線なので投稿はしないだろうなあと思いつつ魔人ママルのところあたりまで一気に書いておりました。


しかしやはりこれだけ長くなってくると、少しでも感想をいただきたいと思うのが人の心。なんか毎日投稿するとコメントやレビューがいっぱいもらえるらしいという情報を信じて投稿を始めてみるも、面白いくらいの閑散っぷりでした笑。調べてみるとやはり最重要条件は「流行りに乗っているか」のような気がしたので、がっかり半分安堵半分というところでしたね。最初にコメントいただけた時は本当に奇跡が起こったと思って泣きました。いや、奇跡なんですけども。


それでも(特にカクヨムで)綺麗に体裁が整い、ルビもふられ、目次がどんどん長くなっていくのを見ていると嬉しくて、まずは完結させようという意思が強くなっていきました。おひとりかおふたりは見てくれているはず……私じゃなければ(笑)という気持ちで、最後まで見てくださった方をせめてがっかりさせないようにしようという一心で完結まで走りました。ストックがあったのでほぼ毎日投稿でしたが、これはほんと正解だったなと思います。過疎っている上に続きも決めてなければ折れていたかもしれません。


完結する日は勝手に死ぬほどドキドキしていて、仕事が手につかなかった思い出があります。ささやかながら噂に聞く完結ブーストというものも起こって、どこの作品?というぐらいのPVがつきました。これだけでも嬉しかったですが、一気読みからの感想や、今まで水面下で追っていたけど最後だから感想書くぜ!という神様も現れて、ようやく孤独な心が救われた感じでした……。


今思い返せば、投稿に精一杯で全然他作品に遊びにいかなかったことが一番の過疎原因に思えます。あらゆる面で勉強不足だったことを痛感し、そこからはサイト内交流を広げたりSNSにも注力したりするようになり、ようやく投稿サイトというものの全容がつかめてきたという。うん、遅かったね!


はい。ここまでが当時の投稿状況を振り返るという作者の勝手なエゴでした。次からは物語やキャラクター、続編に関するお話をしていきたいと思います。



☆物語とキャラクターの起源


なぜだか「勇者」という存在について考えていて、勇者って一文字違えば「亡者」にもなるんだなあハハハなんて思いついたのがきっかけだったと記憶しております。このふたつを掛けて何か物語が作れそうだなと考え、ふと最初に浮かんだのが


『春の日、ベッドで穏やかに逝く老女。彼女の手を握る魔物の青年』


というまさに物語のエピローグシーンだったのです。明るい日差しや舞い込む風、庭からただよう甘いリンゴの香りまで、すべてこの時に思い描いたとおりに書きました。物語を書く方なら一度はある経験だと思いますが、本当に人間の脳って不思議ですよね。


そこで『青年のほうは人外で歳をとらないけど、最後は愛するひとと一緒に旅立つこと』というラストを実現すべく主人公エッドというキャラクターが生まれ、彼を支える役目として親友ログレスが生まれ、最愛のひとであり最大の困難としても機能する想い人、メリエールが誕生しました。アレイアは3人の間を繋ぎ、物語を明るくしてくれるユニークキャラとして最後に設定した覚えがあります。


ファンタジーの定番といえばやはり、10代の若者たちが冒険を繰り広げて世界を救うという物語。なぜかこの時の私はひねくれていたのか、そういうのが大好きなわりに「この話では絶対そんなことやらせないぞ」という謎の決意に満ちていました。自身がそれなりに大人になってしまったという悲壮感もあったかも(ひどい)。今は一周回ってキラキラ(語弊)な胸躍る冒険ファンタジー(に見せかけた血みどろ話)を書いていますけどね!


というわけでキャラクターは全員成人済み、とくにエッドはともすれば「おっさん」と若者に呼ばれてしまう30歳に設定しました。パーティーのリーダーらしく最年長で、他の仲間たちは少し年下に。30代と20代という薄い壁をもうけたいという謎のこだわりもありました。


キャラたちの性格に関しては、これはドラ嘘でもそうなのですけど思いついた時から連載終了まで大きな変更はなかったと思います。主人公がいて、彼(彼女)が動きやすいように、または動きにくくなるようにサブキャラを決めていく方針です。エッドは死んでいるのに楽観的な男性なので、想い人は真面目で冗談の通じない女性に。両者をよく知るログレスは、エッドの冗談を許容しつつもメルの手堅さを理解する賢人、そして魔術師らしい変人に。読者のかわりにどんどん疑問をぶつけていける若いキャラとしてアレイア、という感じです。……まさかログと付き合う流れになるとは思いませんでしたが(え)。


敵側(ライルベルや聖者連合)については、物語の大筋に沿って考えていった感じです。想い人をさらったライルベルがボスと思わせておいて、実はその剣がボスであるという設定はあったと思います。その過程で『緋色の夜明け』という集団が絡んでくる陰謀を思いついたんですけど、これを全部入れるととんでもない長さになる上に「告白の物語」から大きく外れてしまう気がして伏線扱いに。


さらに聖者連合、とくにジリオのことを考えているとなんだかただの「悪」ではないような気がして、彼らも被害者であるという救いを与えたくなったというのもあります。すっきりした勧善懲悪ではないので、ここは好き嫌いが分かれる部分でもありますね。その分ライルベルは大いにムカつくキャラにしたので、ぶっとばしてみたのですけど(いい笑顔)。……実は彼、2部では光堕ちして良いひとになって出てくる構想があります笑。戦闘力はあるのでちゃんとしてれば使えるはず。


ありがたい各レビューで存分に言及いただいていることなのですが、『勇亡者さま』のテーマは「死と生と恋」。カクヨムで設定している「死んで、恋して、戦って」というキャッチコピーは自分なりに気に入っていたりします。途方もなく困難な恋の成就を目指しつつ、死んでしまった主人公を通して「生きていること」を見つめるようなお話にしてみたつもりです。


時折エッドが仲間たちや街の人々に流れる時間の存在を気にし、立ち止まるシーンがあります(ウェルス大陸に降り立った直後など)。切ないシーンですが、私が彼にいてほしい立ち位置を示した大事な部分なのです。彼が眠らない存在になってしまったという設定もそうです。魔物ですら普通は眠るので、不死者というのは魔物の中でもさらに特殊なカテゴリに属していることを表現したくて。ヒトも魔物も生きていくために生きているのに、不死者はなぜ存在するのか――それはきっとやはり、残してしまった“想い”のためなんじゃないかと私は思うのです。


☆あったかもしれない第2部について


ここが一番裏話的かもしれません。しかしまさか、この件について2年越しに語る日がこようとは……。笑


多くの方が察してくださったように、『勇亡者さま』には続編の設定がされていました。当時の資料からあらすじを以下に抜粋してみます。


“メリエールと無事に結ばれ、村でささやかな暮らしをはじめたエッド。しかしそこへ届いたのは、王都で起きた暗殺事件の報せ。勇者ではないエッドには関係ない事柄のはずが、なんと王を殺害したのは数年前に斃れたはずの『勇者』、エッド・アーテルそのひとなのだという。

そして、まさに生者だった頃の自分と相違ないヒト姿をした凶人は、王の側近にこう名乗ったらしい――『魔王たる我が、この世界を喰らってやろう』と。


信じられない話に驚くエッド。しかしその『勇者』と共に緋色のローブ姿を見たという情報を得、なにか大きな陰謀が動き始めたことを知る。セプトールの手引きで王都へ調査に潜ったエッドだが、目ぼしい情報は得られない。自分が指名手配として追われることになった現実を知り、田舎の両親をラケア村へと匿うことを決意する。


どうにか両親を連れて帰郷したエッド。しかし平和な村を蹂躙しているのは大量の不死者たちだった。その中心では、強力な魔術師であるはずの親友が何者かに首を締め上げられている。他の仲間たちも惨敗しているのを見て取ったエッドは亡者の力を最大出力し、災厄の中心人物へと躍りかかった。


「ようやく来たか、出来損ないめ」


圧倒的な力の差を見せつけられるエッド。そこでふと、生前の己の姿をした乱入者に違和感を覚える。近くで見れば作り物のように感じるその身体の中で唯一、瑞々しい生気を感じさせる部分――それはかつて隣大陸の勇者に切り落とされ、持ち去られた片腕だった。


一方村の襲撃のことを知らないメリエールはひとり、妖精たちの住まう『花束の谷』を訪れていた。今までに感じたことのない気配を辿っていくと、花畑の中で倒れている少女を見つける。妖精かと見紛うほどに美しい少女は、メリエールをみるなりこう呟いた――『ママ』。”


……みたいな感じのことが書き殴られていました(掲載にあたり少し整えました)。自分で書くのもなんですがちょっと面白そうだなこれ(笑)


エッドの片腕をもとに作られたエッドにそっくりな『魔王』。そして時を同じくして現れた謎の少女『フェムシャ』。エッドとメルのことをパパママと言って懐いてしまった彼女をなぜか面倒みることになりつつ、『緋色の夜明け』の陰謀に立ち向かう――という、今度こそ“勇者”らしく世界を救うお話です。まあご存知の通り、やっぱり死んでるんですけど。


雑すぎるプロットによると、サブキャラたちのイベントもいっぱいあるようです。アレイアの出自(彼女は何気に名字さえ出てきてません)の判明や、それに伴ってログレスが正式にプロポーズする話だとか、エッドの両親についに亡者姿を暴露する話とか。指名手配になったことで勇者時代の仲間たちと対峙することになるシリアスもあれば、心を入れ替え旅の修行僧になったライルベルが各地で人助けをするというほっこり(?)なお話もあるとのこと。どうした当時の自分。そんなに詰め込むから長くなるんだよ。


☆まとめとお礼


以上が今更語ってみる『勇亡者さま』の裏話となります。当時の振り返りをしてみるのは初めてでしたが、すごく楽しく懐かしかったです^^ 最近はビジュアルも起こしたりしているので、このまま熱が高まったら続編も書いてみたいところではありますね(ドラ嘘がまだまだ長いんですけど……)。


改めてこのような場のきっかけを作ってくださったギフト主さん、そして最近お読みいただいている読者さま。もちろん、付き合いもないのに当時お読みいただいた神のような方々。ひとりで抱え込んでいるだけでは味わえなかった感動を体験させていただき、本当に本当にありがとうございました。投稿してよかったなあ。


それと某所でつぶやいたことですが、資料を探す途中で自身でもすっかり忘れていたおまけエピソードを発掘しました。ログレスとエッドの出会いのお話と、勇者パーティーにいた他の仲間(ニータやグルゲイルなど)がその後どうしていたかっていう非常にニッチな外伝です笑。でもやたらとふたつとも長いので、加筆修正などしていつか出せたら……。


長々とお付き合いありがとうございました!この点はなにか気になるとかあれば遠慮なくコメントやTwitterでお問い合わせくださいませ。ではでは♪


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