★シーン15:守り切ったもの(PC②)

〇解説

 PC②の個別エンディングの例。


〇描写

 「ただいまー」


 今日もあなたより遅く帰ってきた妹。

 断腸の思いで断った『夢の国』だったが、案外最良の選択だと言えた。一度自室に戻った妹は、着替えてリビングに戻ってくるなり、テレビをつける。

 そして、


 「ふふん、今日は私の料理当番だねー、任せて!」


 何かいいことでもあったのか、テンションが高い。理由はすぐに判明した。


 「じゃじゃん、B判定!」


 どうやら受けた模試の結果が良かったようだ。掛け声とともに机に叩きつける。


 「BだよB! 前がEだから大きな前進だよー。今ならビーフシチュー、作れるかも」


 と浮かれ気分でキッチンに消えていく。

 部活を引退し、目標を国公立に定めてからの妹の努力は、目を見張るものがあった。その努力が結果として表れたのだから、喜びはひとしお。

 そうした彼女の努力が報われるよう、密かに努力するあなたにとっても、それはきっと、一定の感慨をもたらすものだろう。


 「ごめん、調子乗った。でも、おいしくできたから、許してほしいなー…なんて」


 煮込み料理のシチューを、帰って来てから作ったために、夕餉はかなり遅い時間になっていた。

 つけられたテレビはとうにゴールデンタイムを過ぎ、ニッチな内容を取り上げる番組が増えて来ていた。

 そのうちの一つ。『噂の徹底検証!』に出ていた俳優を見て妹が声をあげる。


 「あ、ヒナちゃんだ! 知ってる? めっちゃ可愛いんだー」


 内容は大食い店に現れる大食漢は何者かを調査するというもの。その男性に負けないぐらい、たくさん食べている俳優が妹のいわゆる推し、四宮ひなだという。と先ほどまでその俳優の話をしていたかと思えば、


 「ん? 透明人間…。何これ面白そうー」


 ころころと話題が変わる。そんないつもと変わらない日常。家族との何気ない会話。ふとした時。それらすべてがあなたに、守るべきものを守り切ったのだと教えてくれるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『Pleasure land』 misaka @misakaqda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ