★シーン14:心が覚えているもの(PC①)

〇解説

PC①の個別エンディングの例。


〇描写

 「おひさ」


 小さく手をあげた楠木夏織が、あなたに挨拶する。

 『夢の国』が消滅して数日。しばらく検査のために入院していた彼女だったがようやく、学校生活に戻ってきていた。


 「なんで入院してたのかわかんないまま、ベッドで寝てた。チョー暇だった」


 と入院生活を振り返っている。結局、謎の少女が男を連れ去ってすぐ。瞬きの間に『夢の国』は消滅していた。

 中にいた人々はアトラクションパークの跡地に放り出され、眠った状態で発見されたのだった。


 メディアでは集団ヒステリーや新興宗教などと叫ばれていたが、事実を知るのはオーヴァードであるあなた達ごく少数だろう。一般人である楠木夏織が中でのことを覚えているはずもなかった。


 「私らを助けてくれたの、生徒指導のPC③先生らしいよ。後でお礼、言いに行かないと」


 学校で生徒たちを救助したのは教師であるPC③だというのが共通認識になりつつある。

 いち生徒でしかないあなたの働きを知る者も、ごく少数になっていた。


 「でも、勘違いだったらごめん。なんとなく、PC①が不思議な力使って、必死で私を守ってくれたような、探してくれたような気がしてさ…。そこんとこ、どう?」


▶肯定

 「やっぱり? じゃあPC①にもお礼言わなきゃ。その、ありがとね」


 近しいからこその気恥ずかしさ。少し赤くなりながらも、きちんとあなたを見て楠木夏織はお礼を言う。

 あなたをしっかりと見ていたからこそ。確証はなくても、心のどこかで。彼女はあなたの努力を覚えていた。



▶否定

 「気のせい…? うーん、でもなぁ」


 あなたの答えに、それでも首ひねる楠木夏織。

 あなたをしっかりと見ていたからこそ。確証はなくても、心のどこかで。彼女はあなたの努力を覚えていた。


 「はい、座れー。朝学始めるぞー」


 担任の教師が入ってきて、生徒に着席を促す。


 「やば、先生きたし。じゃあまたあとで」


 そう言って、かばんを持って急いで席に向かう楠木夏織。

 そのかばんには、動物をつぎはぎしたようなマスコットをあしらったキーホルダーが静かに、揺れていたのだった。

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