第6話 夢

 私は羽根ペンを机に置き、伸びをする。伸びをしたのに呼吸はまだ早いままで、顔が笑っているのがわかる。さっきまで書いていたノートを手に取り、最初のページから読み返す。


 完成だ。初めて小説を書き終えた私の心臓が、興奮で跳ねているのを感じていた。


 小説を書き終えたら最初にすることは決めていた。私は机の上に置いていた箱を手に取って開け、さっきまで使っていた羽根ペンを入れる。迷いはなかった。

 箱を閉じて、息を吸う。


「伝言屋の私です。私、小説家になりました。あなたに決めてもらった夢が叶いました。私に夢を与えてくれて本当にありがとうございます!」


 私は箱を開けて、自分で買ったペンを手に取り、手帳の新しいページに書き込む。彼女のことを手帳に書くのは初めてだった。

 

「小説家

 小説家になった私から、夢を与えてくれたあなたへ

 ありがとう」

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ミラの伝言屋 揚げみかん @citrus_friends0

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