第3話

 代り映えのない日常。今日は金曜日。予報では今夜、高確率で星の雨が降るという。

 いつものように授業を受け、いつものように家に帰る。

 委員会の仕事からも解放されたぼくは、自室にこもって自主学習の日々に戻る。

 ……

 …………

 午後8時半ごろのことだ。夕食と入浴を終え、本でも読むかと立ち上がった時、ほとんど仕事を果たさなくなった携帯電話が震えた。継続した振動は通話の証だ。

 相手は——委員長。

 文化祭のことだろうか。何か不備があったのか、トラブルか。

 携帯電話を取って、応答のボタンを押す。

「はい。ぼくです」

『あ、こんな遅くにごめんね。迷惑じゃなかった?』

 快活な声が受話口から聞こえてきた。

「いえ、大丈夫ですよ。文化祭のこと、何かあったんですか」

『事務的だねーきみ。ねえ、星、一緒に見ようよ』

 ————どくん

 心臓が跳ねた。

 突然の申し出に停止しかけた脳を必死に回す。

「それは……急な誘いですね」

『それはほんっとにゴメン。ホントは学校で誘おうと思ったんだけど、すぐ帰っちゃったから』

 あはは、と苦笑する。

『それで、どう?』

 努めて冷静に、ぼくは答える。

「それは、もちろん。ぼくも流れ星は見る予定でしたし」

 よかった、と彼女は電話越しに喜んだ。

 流星群が活発になるのは9時半ごろらしい。


 1時間ほど世間話をして、時刻は9時34分。

『あ!』

 彼女が叫んだ。

 流れ星第一号を発見しただろうことはすぐに理解できた。

 ぼくも空に視線を上げる。

 ぽつ、ぽつぽつ、ぽつぽつぽつ、

 星が降り始めた。

『……綺麗だね』

「ですね」

 嗚呼、と息が漏れる。


「————————」

 

 今夜、星の降る夜に、君を詠う。

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星降る夜に、君を詠う SeirA @Aries10010

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