2.ようこそ、極上な異世界へ
降りた目の前には、長い赤い
「えっ……⁇」
エレベーターから部屋までの電球は切れていて真っ暗なはずなのに、朝かと思うくらい明るい。
さらに、床なんて引っ越してからずっと汚かったと言うのに、綺麗な絨毯が
「何かあったのか??」
俺は、恐る恐る絨毯の上に足エレベーターから出して、エレベーターからぴょんっと飛び降りた。
ーーボフッ
「おっ??」
両足を絨毯に降りたところ、かなりの厚みがあるようでいい音を立てた。
こんな高そうな絨毯に乗ることができるなんて、
感動した俺は、その場でぴょんぴょんと飛び
ボフッ、ボフッ、ボフッ
どうしてマンション内に、こんな高級そうな絨毯が敷かれているのかわからない。
大学生にもなって絨毯で遊ぶなんて恥ずかしいと言われそうだが、こんな時間なら誰にも見られることはないだろう。
トランポリンとは違い、ボフッと音を立てて
「よし、もういっちょ……」
「せぇぇぇいっっっ!!!!!!!!」
「うぇぇぇぇぇいっっっ!!!!!!!!」
耳鳴りがしそうなほど大きな声が聞こえてきて、俺はバランスを崩してその場に倒れてしまった。
「うぇい⁇なに⁉」
上半身を起こして辺りを見渡すと、俺は
なんと、
全員右手を天井に向けて立っている。
その人達の先……絨毯のもっと先を見ると、階段があった。
階段の頂上には、無駄に縦長の
「ひぇっ……」
俺は青ざめながら、周りの人達と椅子に座るおっさんを
周りの人達は
だが、目の前のおっさんは被っていないので顔は見えるのだ。
左目辺りには大きな傷があるので、裏社会の人間だと言うのは隠す気が無いようだ。
降りる階を間違えたのだろう……でなければ、こんな人達が同じ階に住んでいたのに気付かないなんて有り得ない。
もしかして、ワンフロアを購入してぶち抜いたとかではないだろうか……
このマンションはポルターガイスト現象だけでなく、裏社会の人間までいるのかと思うと、もう引っ越し
とりあえず、今は穏便に事を済まして逃げるよりほかはない。
俺は恐怖に
「……すみません!!!!階を間違えましたー」
俺はそう言って、椅子に座るおっさんに頭を下げた後、鎧を着た人達にも向かって素早く頭を下げた。
そして、さっさとエレベーターに戻ろうと振り返った。
「……えっ⁇」
振り返った先にはまだ鎧を着た人達が立っており、その先には大きな扉が目に入った。
そう、先ほどまで自分が乗っていたエレベーターがないのだ。
エレベーターとわかりづらいように何か貼って隠しているのかと思い、エレベーターが合ったはずの位置を
「……なんで⁉」
何が起きているのか状況を理解できない俺は、パニックになり始めていた。
山で
だが、ここは山ではない。
迷子……ではあるが、マンション内だから迷子になったなんて知られたら赤っ
とにかくいったん落ち着いて、冷静になろう……と思うにも、この状況では冷静になんてなっていられない。
「おい、お前」
「はぃぃぃっ!!!!すみません!!!!」
後ろからドスの効いた声が聞こえてきた。
多分、椅子に座っていたおっさんの声に違いない。
俺は振り返るなり、勢いよく頭を下げた。
「……お前、どこのもんだ⁇」
「はい!!!!七百十五号室の市原克実です!!!!しがない大学生ですので、どうか命だけは!!!!」
俺は目を
俺が言葉を発してから、辺りはしーんと静まり返っているのだ。
許されたのか、無視をされているのか、それとも一芸をしなければならないのか……
自分の置かれている状況がまったく
俺はゆっくりと目を開けて、頭を上げた。
すると、目の前には椅子に座っていたおっさんの顔があった。
「ああああああああああああっっっ!!!!!!!!!!⁇⁇⁇⁇⁇」
俺は
おっさんは少し顔を後ろに下げて、嫌な顔をしていた。
「ちっ、うっせーな」
「……す、すびばせん……」
俺は今にも泣きだしそうなくらい、怖くてしょうがなかった。
どうしてこんなことになったのか、俺が何をしたんだと
「どうやら
そう言いながらおっさんは、
「て……てきしゅ⁇」
「おら、はよ立てやチビ」
おっさんはそう言って、俺の首根っこを掴みひょいっと持ち上げた。
俺は目が点になった状態で、その場に立たされた。
そんな子どもをひっ捕まえるような状況ってどんなんだよと思ったが、おっさんを見てその言葉は消えた。
おっさんは俺を
このおっさんがまっすぐ立ったら、小学生と大人が立っていると思われても仕方ないくらいの身長差な気がする。
おっさんには
「チビ。どうやらお前は異世界から来たようだな」
「……異世界⁇」
おっさんが
確かに俺はこの人達が生きている裏社会の人間ではないが、それを異世界なんて言い方をするのはどうかと思う。
「
おっさんはそう言うと、声を高らかにして笑い始めた。
それに合わせて、周りの人達も大きな声で笑い始めたのだ。
俺はおっさんの笑い声にも反応して驚いたが、周りの人達の笑い声にも驚いてしまった。
異世界、勇者、召喚……まるで物語のような言葉を発するおっさんに、俺は
俺はホッとして大きなため息をついた。
それに反応したのかどうかはわからないが、おっさんが笑うのを止めて俺をじっと見つめてきた。
おっさんが笑うのを止めると、周りの人達も笑うのを止めたので、辺りはまた
「どうだ⁇この世界は……
「……へっ⁇」
おっさんはニヤニヤとした顔で俺を見つめてくるのだ。
俺は心臓が高鳴るのを感じた。
「それに、ここにいる
「えっ⁇……あっ、はい。極上っす」
俺が小さく
最弱勇者は魔女様に愛される 紗音。 @Shaon_Saboh
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