第15話 転生先は……

 公爵の手はずはすばやく二日後には資料がボブの手元に届いた。


 それからボブは3年間。資料を読み込んだ。

 家族を心配させないように日中は普通に働いて過ごした。

 そして夜になると何度も何度も資料を通読した。資料はすり減ってあちこちぼろぼろに痛んでしまったが、ボブの頭にはもはやすべての発言がインプットされていた。

 驚いたことに資料にはセラピーの記録外に、メアリーの地球での様々な情報までついていた。公爵が配慮してくれたのだ。それにその指示を受けて実行した部下も非常に優秀だったのだろう。これが公爵家の力か、と思うと強請のようなことをしに言った自分がどれだけおろかで危険だったかと思い知らされた。

 これはある意味でジョンの素行の悪さに救われたと言うことかも知れない。彼がメアリーの転生先へ行くかも知れない、と知ったジョンは狂ったように怒っただろう。お返しはこれで十分だ。


 結果としてゲームのタイトルを示すようなヒントはなかった。

 だがメアリーがどんな暮らしをしていたか、どんな気持ちの変動があったのか、記録と付録資料からうかがい知ることはできた。

 メアリーは戦いを好まない。<RW>をやらないわけだ。

 当時、メアリーが遊んだ可能性があり、しかも記録が残らないとなると通常の(オンライン)ゲームではない。

 そもそも転生先になりうる世界観のあるゲームでなければならない。

 ……。

 様々な情報を組み合わせていった結果、ボブは3つまでゲームタイトルを絞り込んだ。

<お花物語>

<カフェでお茶を>

<パティシエ・ストーリー>

 いずれもインディーズ的な小さなゲームだった。だが発売時にそこそこに話題になったのでメアリーが知っていた可能性もあった。


 転生者に許される特別な通信を使ってボブは<カフェでお茶を>を遊んだ。


 それから……。ボブがメアリーに会えたのかは誰にもわからない。

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転生殺人事件~転生先はやりこんだゲームの世界2050~ ホークピーク @NA_NA_NA

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