魔導書じゃありませんよ、ただの全自動日記です! インテリジェンスダイアリーと新米魔術師~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
1日目~3日目:新マスターはポンコツ魔術少女?!
困りました。非常に困りました……。
いえ、別に私は困っていないのですが、多分これから目の前の
彼女と出会ったのはとある
空を思わせる
しばらく店内を
ただ、
けれど、そんな正体不明の本を、彼女は少なくない金額を払い購入します……。
……それこそがなにを隠そう私です!!
その
さておき、そう……つまるところ、ただの日記なのです。
日記なのですが、私の新しい所有者になった青い髪の少女シエルは多分なにかを
今もこうして
ちなみにシエルが内容を
私は
そうなると新しい所有者とはいえ、今までに書き留めた他人の私生活をつまびらかするのは
なのに、そうとは知らないシエルはニコニコ顔でページをめくり続けます……。
そうして疑問はその日の夜に解決しました。
ここはシエルの暮らす賃貸の集合住宅。小さな台所とトイレ、お風呂付きのワンルーム。
そんな彼女の生活空間兼寝室である部屋に並んでいるのは数々の魔術道具。
これアレだぁ! この
でも、残念! 私はただの日記です! 全自動なだけです!!
だから、ほら! もう読み進めるのをやめるのです!
それ以上ページをめくると、
しかし、シエルが手を止めるわけはなく……。
はい……しかたがないので前所有者たちの記述と同じく暗号化しました!
だって……あんなに眼を輝かせてるのに
けれど、その結果……
うぅ……早く、早く気付くのです、これがただの日記だと!!
今日の収支
-500シルド(私の代金)
-8シルド(喫茶店:お茶、軽食)
――――――――
残金:2500シルド
なんと私、簡易家計簿的な機能付きです! 賢い! 流石、
★ ★ ★
まだ
この
顔を洗い、
なにか
勝手に増えていく解読不能な文字列のなにがそんなに嬉しいんでしょう? 不思議です。
そうしてやって来たのは集合住宅の中庭らしい場所。
ここでなにをするのかと思えば、彼女は私が昨日書いたページを開き、手にした杖を
え? 一体なにをやってるんですか?
突然始まった不可解な行動の意味が分からず混乱しつつも、シエルの観察を続けること数分。
うん? 杖を振りながらなにか
九十八、九十九、百……あ、あと四百回! って、なるほど杖の
そう言えば過去の所有者にもいましたっけ、魔術師にも体力が必要だからって朝夕欠かさず杖を振る人。まぁ、凄く少数派ですけど……。
一人納得しかけると、むぅ、五百回とか多いです! それに最後は二千五百回ですか? なんてどこか不満げな声を
う~ん? なんだか見覚えというか、書き覚えのある数字……!
気付けば額に沢山の汗を浮かべ、シエルが私を
これは……もしかして、ひょっとして、簡易家計簿機能の数字だけは解読できてるんじゃないですか、この娘?!
それを魔導書が彼女専用に作った特訓内容と勘違いして、素振りを始めたのでは?!
待って! 待ちなさい! 私、ただの日記! 日記だから!
自分専用のトレーニングメニューだと思っている数字は全て、貴女が昨日使ったお金とその残金です! お願い気付いて!
しかし、私の願いも
ちなみに残った数字の八ですが、これは間に八回は休んでいいってことですね! などと都合のいい
違う、違うんですよ……それも、貴女が使ったお金なんですよ……?
そうして数時間後。
シエルはついに三千回の素振りを完了します。
早朝から始めたのに、空はすっかり茜色。普段、運動をしないから疲れましたぁ~、と
ま、まぁ、彼女が満足しているなら別にいいのです。
それにほら! 少なからず効果があることは以前の所有者で証明されてますからね、素振り! だから、うん! 問題はありません! ありませんったら!
今日の収支
――――――――
(残金変動なし)
よしっ……これで明日は大丈夫なはず! だって、今日はお金使ってませんからね!
★ ★ ★
早朝、昨日の素振りが
そうして、ページをめくった次の瞬間、
今日は素振りがない! って、いやいや、元々そんなトレーニングメニューは存在しないんですよ?
でも、これで確定ですね。やっぱりこの娘、どういうわけか簡易家計簿の数字部分だけは
さておき、今朝はそんな地獄の特訓がないせいか、シエルは心なし浮かれた様子で食事の
あぁ、ちょっと! 私を台所へ運ぶのはやめるのです! 汚れちゃうから!
朝食を終えると、シエルは私と各種魔術道具を
大通りをしばらく歩き続けると、目の前に現れたのは巨大な大穴。
そこに一シルド銅貨を投げ入れ、今日は上手くいきますように、となにやら目を閉じ手を合わせて呟くシエル。
次に向かった先は、大穴の近くにある石造りの建物。
中に入ると受付らしきところになにやら書類を提出し、地下へ続くらしい階段を
通り抜けると、目の前に広がる
なるほど……ここはあの
何代前かは忘れましたが、以前の所有者が色々調べていた記録があります……。
封印迷宮シルメイズ。
それは
迷宮からは現代では考えられない財宝や
しかし、その
そんな場所に
はぁ……まったく、とんでもないところに連れてこられました……。
とりあえず、シエル? マイマスター? 私を絶対に落とさないでくださいね! 迷宮の
その
恐らくそれらが探索者の収入源なのでしょう……うん、これは、アレですね! 前の所有者にもいた
だから、シエルは古書店で魔導書を探していたんですよ……。
魔術師なら魔導書や魔導具で自身を強化すれば、自衛手段が増えますからね……。
でも、残念……悲しいかな、私はただの日記帳なのです……ツラい。
数時間後、シエルは無事に探索を終え、迷宮外へ。
入口近くの受付らしき場所で、手に入れた品々を
今日の収支
+120シルド(迷宮での収集品など)
――――――――
残金:2620シルド
さぁ、明日は素振り地獄に苦しむのです!
……to be continued?(私とシエルの冒険はまだ始まったばかり??)
魔導書じゃありませんよ、ただの全自動日記です! インテリジェンスダイアリーと新米魔術師~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
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