KAC2022に初参戦

脳幹 まこと

経過報告



2月26日

カクヨムに登録して5年になろうとしている。

今までちまちまと作品を書いてきたが、そろそろ大きなイベントも試してみようと思った。

カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ(KAC)――1か月に渡り、出されたお題に対する小説を書き続けるという、マラソンのような企画である。

仕事の都合はどうだろうか、毎回出し切れるのかなど、不安は多々あったものの、別に守れなかったからって命が取られるワケでもない。

こういうのはノリが大切だ。


2月28日

今までのKACで出されたお題や、期限といった内容を確認してみた。

見た限りは、2日または3日間といった感じだった。平日休日の関係がないので、キツい日もあるかもしれない。

このために、ロイヤリティプログラムに参加したり、なかなか新鮮だった。

お金がもらえるなんて、仮にスズメの涙程度であってもうれしくなるな。妻に話してみると「どれだけ儲かるの?」っていうから、冗談で盛ってやった。


3月1日

記念すべき第1回は『二刀流』。

こういうのは気楽にやるのがいい。去年に比べて最低文字数が600文字と下がったのも、気楽さを後押しする。

ない頭を捻って、『二刀を負う者、一頭も得ず』を作成。

最初だったので話のタイトルも「KAC20221」とした。

(3月3日追記・タイトルは上手いことを言ったつもりだったが、誰も突っ込むことはなかった)


3月4日

第2回『推し活』。期限が3月9日と長めに設定されている。

前回と異なり、ちょっと凝ったものを作れるかもしれない。

頭を悩ませる私に、妻がコーヒーを差し入れてくれた。こういう気遣いはうれしい。


3月6日

『ホーム、スウィートホーム』を作成。

一発ネタだが、こういうのを先に作っておけば、時間が無くなったとしても最悪提出は出来るので悪くはないだろう。

KACというイベントに参加しているからか、それなりにPVが入ってくる。

妻は楽し気に「どれくらい入ってきた?」なんて聞くものだから、「やっぱりイベントとなると違うな。桁がいつもと1桁違うよ」と答える。

1桁が、2桁になったというだけの話なんだけども。


3月7日・1

昨日夜に『オススメAIさん』を作成した。

「推し活」から「推すことが仕事」であるAIに的を絞った作品だ。

反響は……前作よりかは大きいものだった。おそらくAIや機械が持つ「性能差」「型落ち」という宿命だったり、古いモノを敢えて愛でるといった人情味が琴線に触れたのだろうと推察される。


3月7日・2

膵臓の一部「ランゲルハンス島」の名前がカッコいいと思った、という一点のみで『臓器ダービー』を作った。

8匹分の競争臓と騎手を考えるのが一番大変だった。


3月8日

昨日の『臓器ダービー』について、話のトチ狂いっぷりが功を奏したのか、何故か人気が出た。

人は読書に新たな発見を求めているのだろうか。


3月9日

第3回のお題は『第六感』。

期限は3月11日昼まで。前回とはえらく期間が違う。

仕事はこんな時でもためらいなく降りかかる。


3月10日

終わらない。間に合わないかもしれない。


3月11日

期限当日になって、『第六感神経痛』を出した。

「肋間神経痛」と「第六感」を掛け合わせたネーミングだった。

夜になってもPVは1しかなく、ストレスで肋間神経痛になった。

なんだったら完全に思考停止で作った『PV1人目が星入れるか予想職人の朝は早い』の方がよほど反響があった。

(3月25日追記・神経痛、2週間たってもPVは1のままだった)


3月12日

第4回は『お笑い/コメディ』だった。

今日のニュースでショッキングなものがあった。

3万円の紙幣を手に入れるために、強盗を行い、結果的に被害者が死亡するという痛ましい事件だ。

皮肉なことだ、全く笑えない。

妻の顔もひきつっていて、「そんな少ないお金の為なんて」とコメントしていた。額の問題ではないと思うが……


3月13日

『お笑い担当の思い出』を出した。

昔の思い出を脚色して、そこにホラー風味を付け加えたような作品だ。

ここまで来て、自分がKACでもホラーばかり投稿していることに気付いた。


3月14日

第5回は『88歳』。

「米寿」を始めとして、老人の話、または88年前の出来事が中心となるかと思われた。

そこで私は「米寿」を「ベージュ」と見立てた都市伝説風のホラー『ベージュおばば』を作った。

評判は……


3月15日

そうだ。

8を横にして∞(無限)と見立て、中二病の老人「ダブル=インフィニティ」が登場するなんて面白いんじゃないか?

やめよう。


3月16日

第6回は『焼き鳥が登場する物語』だそうだ。

焼き鳥が食べたいなあ。妻に頼んで買ってもらおうか。


3月17日

『フェニックスによる無限焼き鳥生成実験』を作った。

不死鳥は焼かれても灰から蘇る。であれば、焼き鳥を作りたい放題なのではないか、という空腹時によく考える中身のない妄想から作り出された。


3月18日

鳥ではないが、どうにも鳴かず飛ばずだ。

KACというイベントがあったとしても、やはり母数が多いし、何よりも知名度の差が大きすぎる。

毎年恒例のように投稿する人がいて、その作品が毎回クリーンヒットを飛ばしているのであれば、他の人の作品をわざわざ見に行こうなんて考えないだろう。

例えば、観光に際して、京都や鎌倉よりも片田舎を優先する必要があるか、ということなのだ。


3月19日

第7回は『出会いと別れ』。

土日が使えるので、じっくり考えてみよう。

妻がコーヒーを持ってこちらにやってくる。彼女との出会いを書いてみようかと思ったが、別れというのは想像したくない。

「順調に書けてる?」と聞いてきたので、毎度の如く、空元気を見せてやる。


3月20日

色々と悩んで『涙が流れる理由』を出した。

花を登場させたのだが、それが季節と合っているかとか、イメージと相違がないかとか、今までにない作業を強いられた。

風景描写というのはなかなか難しいが、上手く出来ると、こんなに世界が近くなるのだなあとほのかに自画自賛。


3月21日

第8回『私だけのヒーロー』。

動画を見ていたら、ゲームの広告が出てきたので、それをネタに1作書いた。

タイトルは『理想のヒーローを合成してみましょう♡』


3月22日

放置ヒーローのPVの伸びがヤバい。他の作品の5~10倍くらい伸びている。

妻に伝えたら「バズった? 億り人? 億り人?」だって。

☆やお気に入りがそんなに伸びていないことを考えても、キャッチーなタイトルがどれだけの影響を与えるのかが分かる。


3月23日

物騒な出来事がたくさん出てきて、どうにも不安だ。

妻も思いつめたような顔を時たまする。

彼女の笑顔を守りたい。まずは、残りの3回を書き切ることからだ。


3月24日

第9回『猫の手を借りた結果』。

仕事がプログラマということもあって、それを組み込んでみたいなと思った。

シュレディンガーの猫は……既に使い古された感もあるのだが、使わない手はない。ずっとホラーで突き通したので、ここでもホラーにする。


3月25日

『シュレディンガーの猫の手』を出した。

SF的要素を含んだホラーといったところか。nullだったり、NPE(ぬるぽ)の話だったりを説明するのに苦しんだ。

聞きかじった話をして誤りを詰められるのも怖いし……完全なフィクション世界にする方法も考えたが、矛盾がない世界や設定を構築するのは尚更に怖いから断念した。


3月28日

随分、日記を空けてしまった。

第10回は『真夜中』だった。

ホラーとして出したい設定もあったし、温めればそれなりに闇が深そうとも思った。

しかし、年度末ということもあって、土日は多忙を極めた。

結果的には間に合わず、『真夜中の鬼電』という一発ネタを出すにとどまった。真夜中に電話がかかるというシチューションだけでジャンルをホラーにした。

日記だから誰も見ないと思うが、こういったやむを得ない事情によって、断念した人は相当数いると思っているのだ。


3月29日

最後の題材は「日記」だった。

多忙の極みに至り、ほとんど時間もないので、この題材は助かった。この内容自体を作品にしてしまえばいいんだ。

ここまで来たら、全部ホラーで貫き通したかったが、まあ致し方ない……この経過報告は、現代ドラマにでも入れよう……

長い道を走ってみた感想だが、それなりの充実感はあった。

1か月にこれだけモノを考えるというのも珍しい体験だ。

一番気になっていた、KACに参加すれば人気やPVが取れるかという点に関しては、そういった感じではなかったのが回答か。

常日頃の小説投稿だったり、企画参加であったり、評価・レビュー作業であったりを十全に行いつつ、その集大成をKACで表す分にはいいのかもしれない。

反省を活かすのなら、次回はもう少し目を引くタイトルで、明るめの展開か切ない展開を意識して書けるようになれば良いだろうか。


3月30日

おそらく今週末まではずっと多忙だろうから、午前二時にして、今日分の日記を書き終えておくことにしよう。

せっかくだから妻に紹介文を書かせた。一応、彼女も協力者だし。

公開ボタンを押せばKAC2022は終わりだ。

大変だったけど、色々実りもあったなあ。また、次も参加してみたいと思った。








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妻がコーヒーを持ってきてくれたので、それを飲む。

豆でも変えたのだろうか。なんだか酸味が強い気がする。

彼女は私が飲むのを満面の笑顔で見届けている。

何か良いことでもあったのか


 れ

  イ

   シ

 

    キ


     が


     

      あ





「フフフ……これでこの人の遺産リワードは私のもの……これで私も億り人……」


私は「公開」と書かれたボタンをクリックする。

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