令和の神田川

『壷』といじられ愛される作家・タカテン。

その作風は『おバカな主人公』『おバカなヒロイン』『おバカな世界設定』で物語を軽々と回し読者を楽しませるのを得意とする。

 ところが本作品はいい意味での『タカテンらしさ』を一切封印し、高木蒼という人間の内側を徹底的に描くという私小説じみた作品に仕上がっている。そこに我々の知るタカテンではない、別の側面を我々に見せてくれる。

 ある男の挫折・失恋・成功・そして過去との決別。それをたった4千字弱の中にギュッと詰め込んだ逸品。おそらくはタカテンと言う人の人生が見てきたもの、そのものが詰まっているのであろう。

 残念ながら若い子にはちょっと彼の気持ちはわからないかもしれない。人士をある程度すぎた、いい意味でアダルトのための小説である。

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