短編2
――話をしようか。
ある街で起こっている奇妙な物語を
始まりの年、その街のある高校の教室では何故か一席多いのだという
翌年、その椅子は二席に増えた、翌翌年には四席に増えた。
その様な不可解な事象が起きていながら教師は『生徒数は変わっていない』という。
そのクラスの生徒は『初めからこの人数だった』という。
――これはその渦中にいる少年のお話。
俺は今、いたずらを受けている。
昨日まで一緒にバカやった杉田も、遊んでやっていたキモデブの藤田も俺が幾ら話しかけようと完璧に無視を決め込むようになりやがった。
そのくせ、用事がある時は話しかけてきやがる。
そこで俺はあいつらが飽きるまで待つことにした。中学の時にこれを藤田にやったときは結局、あまり楽しめず一日と経たずに止めてしまった。
――二日後
おかしい、絶対におかしい!!
あれから二日間あいつらが飽きるまで待ち続けた。
だが次第に話しかけてくることすら無くなった。あいつらだけならまだいい。いつも金髪メッシュやツーブロック、舌ピなんかのオシャレを散々ディスってくる生活指導の山下すら俺に注意をすることすら無くなった
――更に二日後
ようやく気づいた。
俺はクラス……否、学校全体、教師からもいじめを受けている。
朝一、教室でたむろっていた奴に話しかけようと肩に手を置くとまるでおぞましい者を見たような顔をする。いつも俺を心配して注意をしてくれていた委員長に相談しようと肩をたたく。
委員長なら、あの皆に優しい委員長なら助けてくれると思っただが、振り返った委員長は不思議そうな顔をして直前まで読んでいた本に目を落とす。
初めて……人生で初めて人に対して失望した。
気づけば俺は綾香を、好きな人の頭を殴っていた。椅子から崩れ落ち血を流しながら倒れる委員長を前に呆然と立ち尽くす。近くにいた女子共が慌てながら先生を呼ぶため教室を飛び出す。
暫くして、委員長は山下に連れていかれた。
そこからは自棄になってこの状況を楽しんだ、授業中にいつもなら隠しながら食っている菓子を隠さずに、机の上に足を上げ踏ん反りながら授業を受ける。その次は授業中に席を立ってみる、廊下を全力で走ったり、となりのクラスに入り浸ったり、それに飽きると校舎からでて街へ繰り出した、コンビニに行って悠悠と万引きをしたり、ゲーセンで時間をつぶしたり。
そんなことをしていると当然すぐに飽き、街中をぶらぶらと散策しているといつの間にか寺の目の前に立っていた。「委員長ならわかるんやろーか……」そう言うと今のこの状況と委員長に謝りたい一心で手を合わせる。
突如、緊張が解けたのか異様な眠気に襲われる。
俺は何故かその場で横になり意識を手放す。
目が覚めると俺は同族をみた。
―――如何だっただろうか?
何とも摩訶不思議な今回の出来事。
今回、少年に殴られた少女だが、案外軽傷だったらしくすぐさま元の生活に復帰したそうだ。
否、元の生活に戻ったと言うのは些か違うか……
彼女の生活は何一つ変わっていないのだから。
ふむ、そういへば少年の名前だけ出てきてないって?
あ~何だったか、忘れてしまったな。
まぁ、そこは然程問題ではないのだから。
気にしないでくれ。否気にならないだろう。
―――これは知られざる物語
―――演者
語り部:文車
■■■:■■■■
短編 文車文 @hugurumaaya
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