短編

文車文

短編1 

 日本の山間部にある大きな病院が一つある程度の小さな町

 そこにあるすべての家庭は三人家族らしい

 正確に言うなら多くの家庭でどれだけ子供が居ようと一番下の子が産まれた年に兄妹全員が不慮の事故で亡くなるのだという。

 そのような不幸な噂もあり最近学校でこのような怪談がうまれた。一番下の子の子守で疲れた母が癇癪を起こして上の子を殺すのだという。ある者は一番下の子は宇宙人だという、ある者は子供の形をした妖怪だという。

 まぁ数十年前の魔術が認知される前ならいざ知らず、認知された今ではかなり現実味を帯びた怪談として流行っている。

 では、ここで私も一石を投じさせてもらおう。

 『子供は愛に飢えている、この地では戦前、人身御供を盛んに行っていた時代がある、当時、生贄にされた子供たちが新たに生を受け、前世では与えられ無かった愛を手に入れようと兄弟を殺しているのではないかと』

 これを提唱するのには、絵空事ではあるがある話をしよう。

 『つい先日の金曜、友人宅で久しぶりに遊んだ日のことだ

遊んでいる最中、友人が居眠りを始めたのだ。

 この受験期間、国立を目指し日々、夜更けまで勉強をしている友人の生活習慣を考えるとこうやって親の居ない時に遊べている方が奇跡なのだろう。

 眠りこける友人を尻目に無断ではあるがトイレを借りる。

 途中、いつもなら隣室のベビーベットにいるはずの友人の弟がなぜか友人の部屋に向かっていたので不思議に思ったが、その時はあまり気にせずトイレに向かった。

 トイレから出るときノブを回す方が通常と違い上に回す方だったせいで一瞬パニックになりかけたが、何とか友人を起こすこともなく戻ってくることが出来た。

 私はそこで有り得ない光景を見た、部屋を出た時と同じ姿勢で眠り続ける友の首に巻かれた紐、そして友人の腹の上で笑う赤子の姿を。

 そこまでを見ると私の体は否応なく階段を転げ降りた。

 幸い荷物は玄関に全て置いてある。

荷物を取り、玄関を出ると直ぐに走り出した。

 中学三年、部活にも所属しておらず、体育の授業もめっきり減り衰えた体に鞭を打つ。

  その後、ホラーゲームで定番の迷って帰れないなどということもなく事に家に帰ることが出来た。

 休み明けの月曜、教室で友人が死んだ事を知らされた、なんでも友人宅の裏、渓谷に足を滑らせて落ちたとのこと、葬儀は親族のみで行うらしい。』

 このような経験からこの説を提唱させてもらう。


 日記にだらだらと思いついた怪談と直近の出来事を書いていると一本の電話がかかってくる。

 『さゆ、母さんがそろそろ生まれそうなんだ、先に一人で病院に行っといてくれ!!』

 妊娠後期に入り、お腹が大きくなってきたお母さんがようやく出産を迎えるらしい、父の電話越しの声からは焦りと歓喜が聞こえる。

 「これで私もお姉ちゃんか、どんな子だろう」

 さっきまであんな内容を書いていたのに一番最初に出てくるのがこれか、やっぱり自分でも噓っぱちだと自覚しているらしい。

 玄関を飛び出し、真新しい自転車にまたがる。



 そういえば私が産まれた年に二人いた兄が他界した話を何故か思い出した。




             報告書


■■県■■市における■■■■によると観られる事例


 柊さゆ(以下少女)の遺体が ■■県の山で管理人によって発見される。

 警察への届出無し

 少女両親の寝室より少女、兄弟の物と見られる日記数点を発見

これらの遺品により少女及び少女友人宅の赤子も■■■■である可能性が浮上

 及び周囲一体で類似事例を複数確認


 類似事例における共通事項

・秋から冬にかけて出産

・兄弟姉妹あり

・出産じ搬送された病院

・微弱な■■■■の痕跡



         規定に基づき高専より生徒数名を派遣

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