どさ日記EX『根と心に残ってる言葉』
西紀貫之
どさ日記EX『根と心に残ってる言葉』
1)「あなたの書くものは小説の
コミティア出張編集部に、まだ小説系の窓口があった頃のお話。
もとS(略)の編集だった方が編集長として出張編集部にいらっしゃったんですが、パラパラめくって流し見て、「あなたの書くものは小説の体を成してないですね」っていわれて作品突き返されたというお話くらいまではした記憶があります。
未だに根に持っていていて、いつか見てろよと思っていますが、そこはそれ。
もうひと昔前の話ですね。
2)「よかったら高ポイント取る方法紹介しましょうか?」
新規レーベルの創刊! そんなニュースがあれば、すぐに出版社の代表番号にTELし、該当編集部の担当にアポをとる! ……なんてことを必ずしていた血気盛ん時代のお話。
そんなこんなでお話を伺いに(=自分の売り込みに)新規レーベルの本拠がある飯田橋に赴きました。土砂降り、雷雨の日だったことを思いだします。受付し、入館証を貰い、案内されて待つことしばし。やってきたのは立ち上げの編集者ふたり。
名詞を交わし、向こうから一言。「せっかく来て貰ったのですが、うちはすでにWEB掲載された人気作からしか採らないんですよ。よかったら高ポイント取る方法紹介しましょうか?」と朗らかに。
これは根に持つというか、根に持っていたけど、当時しっかり聞いておけばよかったかもなあと、今は少し後悔しております。
3)「実績薄いけどプライドというかツラの皮は厚い」
これは年末や新年にやっていた作家飲み会の席の話。
かくしてWEB小説華やかりし時代到来、いつまで続くかこの景気……といった話題の中、書籍化ではなく書き下ろしを狙う面々に向けて、その彼らを指して「実績薄いけどプライドというかツラの皮は厚い」と評した方がいらっしゃいました。
これは反発反感よりも、その場のみんなが今の(当時の)市場と、作品作家の流れをよく見てる言葉だったなって思ったそうです。言葉を聞いた瞬間は凍りましたが。
ただ「西紀さんこのタイプっすよね~」って笑いながら言ってきたアイツは許さん。いや、まあ、反論できなかったけど~。
4)「これ何が面白いの?」
作品を完成させたとき、読む前に「これ何が面白いの?」と言われたことがあります。今ならば、この物語は何を楽しむ話なのかという売り文句を伝えればいいと分かりますが、当時は読まずに小馬鹿にされたかのように受け取ってしまっていました。読めよ、読めば分かるよ、それらは伝える努力をしていなかった自分の未熟さの表れでした。
優れた作品や企画プロットをガンガン書ける人は、まず何を楽しむ話か伝えることに秀でています。ああ、自分に足りないのはこれだと、魂に刻まれた瞬間です。
僕の創作は、これらの総合的な見直しからグンと生まれ変わりました。
ターゲットに適した感性のネタを理詰めの弾丸に仕上げ、なるべく上手い鉄砲で、的確に命中させる。
このことに注意して話作りをしました。
そうしたら、うまいこと他社(他者)の作品に関しても売りが分かるようになり、強みやセールスポイントの把握に役立ち、結果、TLやゲームのノベライズ等のお仕事を頂戴できるまでになりました。
思うに「くやしい、今に見ておれ!」は大事ですが、「じゃあどうしよう」「ならこうしよう」がないと駄目だったなってことです。
良き友、良き師、良き環境に恵まれました。
どさ回りの日記をとんと書かなくなった、それが最大の理由です。
どさ日記EX『根と心に残ってる言葉』 西紀貫之 @nishikino_t
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