ルーフスの魔法使い
@sakenomu
第1話
どうしてこうなった。
占いを生業とし、のらりくらりと旅をし続けて数年。ようやくお目当ての"神秘"を見つけたと思いきや、それが物ではなく人に付与されていたなんて……。
色々非常識な自分だが、流石に我が目を疑った。こんなのは範疇外だ。"アルカナ使い"は自分しかいない。そのはずだ。
だが彼女はそこにちゃんと存在している。"アルカナ"と混合しているのか?混乱を通り過ぎて呆けてしまった俺を余所に、銀髪の少女は我関せずとしゃが見込んだ。目に光はなく、盲目だと直ぐに分かった。わかったが……。
「カード占いをしてくれるの?魔術師様なのね!」
「……」
「どうかしましたか?具合でも、悪いのでしょうか。気のせいならいいんだけど……」
「いや……ええと……」
まずい。普段饒舌な性格故に舌の回りは早いと自負してきたが、今や完全に声帯の機能にダメージを与えてしまっている。
この年で小娘相手に緊張しきってたのか……いや緊張というか混乱か?そりゃあそうだ、こんなこと始めてた。兎に角、なんとも居たたまれない様な感覚に陥りながら俺は視線を右往左往させる。すると少女は俺を見上げこう言ってきた。
「綺麗な赤髪ね!珍しいわ」
「……赤は不吉な色だよ、お嬢さん。それにあまり声に出して言うもんじゃない。」
ターバンで隠していた、いや彼女は盲目のはずなのに何故……?見えているのか?
「あら、どうして?赤は情熱の色、私は好き」
「……ありがとう」
俺の髪を指して、笑顔でこう評した。
髪の色を褒められたのはいつぶりだろうか、酷く昔のことのように感じる。
──ああくそ、なんか調子狂うなあ
「お嬢さん、名前は?」
「オレアよオレア・マズナローエ」
「オレア、いい名前だ。さっそくで悪いがオレア……君の"アルカナ"俺が貰ってもいいかい?」
「…アルカナ?」
しまった、直球すぎただろうか……。でも見たところ14、5歳くらい?これぐらいの女の子なら知っててもおかしく無いと踏んでいたが。
「えっと、色んな呼び名があるんだけど大体は"カード"って呼ばれることが多いかな。ちなみに俺は魔術師じゃなくて占い師だ」
「……それって大事な事なの?」
「勿論大事だよ!もし君が占い師じゃない誰かに"アルカナ"を悪用されたら大変だ。"アルカナ"は重要な魔術の源みたいなものだからね」
「そうなのね」
……会話が途切れてしまった。思いの外手強いぞこの子。
「それにしても珍しいな。占い師なんて稼業の人間なんかに話しかけてくるなんてさ」
話題転換を試みるも……あからさま過ぎたかな。でもこの子になら……なんとなくそう思ったのだ。
彼女はまた笑う。そして今度はしっかり俺の目を見てこう言ったんだ。
「私、今兵士に追われているの。だから助けてください」
占い師─いや、"魔法使い"様。
ルーフスの魔法使い @sakenomu
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