不養生

夏生 夕

第1話

この数日、来ないじゃないか。やいやい小童。


うわ、顔赤。 


えぇ?風邪ぇ?ってやつか、もしや。

せっかく人が、というか仮にも神と呼ばれる儂が来てやったというのに。神だぞ。


お前がこの木札を持ち帰った時から、いつかこうして顕れお前で遊んでやろうと思っていた。

間違えた。

お前と、遊んでやろうと思っていた。

うちの宮司もそこそこのものだろう?こうして思念を飛ばせるほどの力を札に籠められる。先々代の頃にはこれがもう、てんでダメでな。そういうハズレ年もある。それはいいんだが。


わざわざ来てみればこの様か。

ダメだな、聞こえてないな丸っきり。もういい、つまらん。止めだやめ。

今日は帰ってやる。

儂はこんな状態の奴に追い討ちをかけるような鬼ではない。神だからな。


大体そんな貧弱だから体を壊すんだ。

いつもいつも起きてんだかどうなんだかな顔つきでやってきやがって。

お前自身の他に、誰がお前以上に体を労るというんだ。まったく。


ん?水か?

もうそれには入ってないぞ。


ふふん、仕方ないなーーー!

儂が水に好かれた神であることに感謝しろよ。そんな器など一瞬で満た


へくしょい。・・・あ。


すまん。別に顔にまでかけるつもりは。


こ、これで熱も少しは下がるじゃろ。

たぶん。ぜったい!

儂の気合いの籠った水だぞ、神の水だぞ。

そうか、震えるほど嬉しいか。


さて疲れたな。夜明けが近い。

もう今日はこの姿を保っていられん。

早く治せよ、つまらん。

お前が来ないと暇がつぶせない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不養生 夏生 夕 @KNA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説