角川武蔵野ミュージアムツアーに参加した話

葛西 秋

 ……さらっと暴露すると、このところ転職転居土地取得の相続税手続きなど諸々があって個人的にヒーコラしていたのですが、おとといの深夜あたりに酒飲みながらスケジュール表を確認したところ、汚いミミズ文字で「みゅーツー」などとポ〇モンのごとき走り書きがありました。


 自分で書いたことながら意味の解読に3秒ほど、先日応募した「カクヨムアニバーサリー」の一環、「角川武蔵野ミュージアムツアー」のことだと判明し、明くる26日、ほにゃらら線から武蔵野線に乗り換えて東所沢に行ってきた次第です。


 結論から言うと、楽しかったですよ!

 あれです、博物館というのはそこの学芸員の方に色々と説明を聞きながら回るのがとても面白いものなのです。


 今回のツアーでは、「武蔵野ミュージアム」の学芸員・関係者の方3名と、カクヨムからは編集長と編集者の方2名が同行しておられましたので、……「ミュージアム」関係者の方にかなり食い気味にいろいろ質問をさせていただきました( ゚ω゚)=3


 当日は東所沢地元の皆さんとの交流イベントも開かれており、ミュージアム周辺は賑わっていましたが、ちょっと風が強かったのが残念ですね。


 最初に案内していただいたラノベ・マンガ図書館では、2万冊を数える古今のラノベが開架に並び、利用者は自由に読むことができるようになっていました。1階が角川の、2階が他社刊行のものと分かれておりました。


「武蔵野ミュージアム」の建物の設計は著名な建築家、隈研吾氏によるものなのですが、ここのラノベ・マンガ図書館書架もまた同氏の設計によるものだそうです。個人的に、閲覧用の椅子が床の低い位置に置かれているのが良いな、と思いました。


 このラノベ・マンガ図書館の吹き抜け2階になっている空間の片面はガラス窓で、外の景色が丸見えです。……いえ、源義庭園という現代風の庭園様の芝生と植栽がありますので、四季折々の景色を楽しむことができます。その庭園と同じ目の高さ、地面に座っているように本を読めるというのは、なかなかに面白い読書体験になるのではないでしょうか。


 図書館のそんな座席でお子さんが「ケロロ軍曹」を読んでおり、そうか、あれはKADOKAWAか、と思いつつ、私の中でのラノベの原点、新井素子氏の「グリーンレクイエム」は……ここじゃない、と分かっているあたり、やはり現在のラノベとは少々離れたところに自分がおる自覚はございます。


 次に向かったのが美術館の4階、エディットタウンと呼ばれるエリアでした。


「武蔵野ミュージアム」館長である松岡正剛氏によって、思考を一方向へと導く数多くの本の配置は興味深かったです。本棚というのは持ち主のその性格性質をあからさまにするものですが、松岡氏の思想の構造を現しているこの巨大な書架は、図書館ではなく、まさしく「美術館」の展示にふさわしいと私には感じられました。


 私とは全く異なる世界の事象の捉え方をしている、とは端的な感想です。

 他人の脳ミソの中を歩いてきた感じ( ゚ω゚)


 余談ですが、日本では博物館と美術館というように呼び分けていますが、私は英語でいうところのmuseumに統一する名称が気に入っております。


 本棚劇場はよくメディアで紹介されている場所ですね。

 吹き抜け5階の高さまで書架が並び、本の迫力に圧倒される空間です。そこでのプロジェクションマッピングも鑑賞してきたのですが、綺麗な発色の映像が本の背表紙に投影されるのは見ていて不思議な気持ちになりました。なるほど、劇場だなあ、と。朗読劇や一人芝居にこの劇場は最適な場所だと思います。本を読む場所ではないです。


 そしてこちらの本棚劇場の裏にある階段、そこはアティックステップと呼ばれて荒俣宏氏の蔵書が並ぶのですが、いちばんの見どころとして学芸員の方に紹介していただいたのがラグクラフト氏のクトゥルフ神話が掲載されたパルプマガジン「Weird Tales」のコレクションですね。現物を拝ませていただきました。


 劣化があるというので実際に開いて中を見ることはできませんでしたが、それでも実物を目の当たりにするということはそれだけでインパクトがあります。

 やだこれ全部でおいくら万円? などと下世話なことを口走りながら見させていただきました。


 次に案内していただいたのが、ミュージアムの外にある令和神社です。こちらも隈研吾氏の設計によるモダンな建築の神社でした。


 鳥居がね、光るんだよ! カラフルに! ゲーミング鳥居! 令和最新版!


 神主の方による説明も丁寧にしていただき、真新しい神社の中を見ることができたのは得難い経験でした(このあたりで前日の睡眠時間4時間が効いてきたことを告白いたします( ゚ω゚)


 最後に、ミュージアム敷地、さくらタウン内にある書店「ダ・ヴィンチストア」に行きました。角川書店の直営書店ということで、出版社の基本方針を発信できる書店というのは面白いと思いました。……岩波書店の岩波ブックセンター信山社あたりと比較してみても面白そうだと思い、出版社直営の書店がどれだけあるのか、調べて訪れてみたくなりました。


 *岩波ブックセンター信山社は倒産し、現在小田急による運営の書店としてリニューアルしています(これはこれで面白い)


 そんなこんなで学芸員の方による解説付きのツアーという、博物館ファン(マニアと言わない余計な矜持)にはたまらない企画を堪能させていただき、1日、とても楽しかったです。


 と、大変に充実した気分で帰宅して、折から降ってきた冷たい雨と、本日いちにち吹き続けていた強風に冷えた体を温めるためカフェラテと葛根湯(錠剤)を摂取したのですが、うっかりそこで大後悔。


 他の作者の方とリアルで交流するチャンスだったのに、ほとんど話してない!


 話しかければよかったよ! お一人で参加されている方も、ご家族連れも、二人連れもおられて、属性もカクヨムの作者とほぼ限られているのに!


 てなわけで、ツアー自体はとても楽しかったし説明も案内もすごく満足していますが、ええっと、参加者の交流の時間を設けていただきたかったな、というのが一参加者からの要望として……ここに書きます。


 この博物館マニアは目の前の餌に食いつくことに精一杯で、自分がカクヨムユーザーであることを失念しておりました。このあたりが反省点でございます。


 さくらタウンで行われていた地域交流イベントに角川の社員の方たちが土曜日出勤で対応しているのを、また今回ツアーに同行しておられたカクヨム編集部の皆様も土曜出勤でのお仕事であったことを考えるにつけ、働くって大変だなあなどとしみじみ社会人としての共感を覚えた次第でもございます。


 とても面白い企画に参加することができ、楽しかったです。この場を借りまして関係者の皆様に今一度、御礼申し上げます。ありがとうございました。


 ……今度あらためて、同敷地のラーメンWalker(*ttps://ramen.walkerplus.com/kitchen/)を訪れたいと思います。

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