第31話 ヴォルス平原
諸事情により旧第31話以降を取り下げております。
第30話直後からこちらに繋がっています。
また、それに合わせて第30話の最後の一文が変わっています。
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開戦2日目、ヴォルス平原で対陣するラドファライシス王国軍に将軍が到着した。
「閣下、現状の報告よろしいでしょうか。」
「よろしく。」
現地のトップである軍団長が報告をする。
「はっ。昨晩、帝国軍約8000人が平原北部より侵攻しようとしていたところ、平原南部に陣を張る我が王国軍13726名を見て立ち往生しております。そのまま侵攻するか、それとも撤退するか判断できていないものと推測されます。」
「ほう、向こうが本隊で、こっちが陽動かもしれないということか。」
「可能性を捨てきれません。」
軍団長は本気でこっちが陽動だと思っているみたいね。
「それはないわ。」
「なぜそういいきれるのです?」
「まず、陽動にしては数が中途半端なの。元々このヴォルス平原は5万の兵同士がぶつかり合う場所です。3ヶ月前の戦いでも、それ以前の戦いでもそうでした。なのにわずか8000の兵がしかも夜の闇に紛れて我が国に入ってこようとした。陽動なら最低でも数万の兵で対峙し、昼間に閧の声をあげて侵攻するはず、目立つためにね。なら、あの8000の兵は他の場所で陽動をしている間に潜入、そしてベリッサ渓谷よりも王都に近いここを抜けて王都を急襲する予定だったのでしょう。だけど、ここに陣を張る約1万3000の兵を見て諦めて撤退してくれればいいのですが、どうでしょうかね。」
すでに戦略として帝国の作戦は破綻していた。全ての戦線で膠着状態になっているからである。そして、ヴォルス平原の帝国軍も撤退できない状況だ。なぜなら彼らがやろうとしていた戦略が帝国軍が撤退してしまうと王国軍側に成立してしまうからだ。あとはここで対峙している間にベリッサ渓谷の陽動部隊が戻ってくれるのを祈るだけである。
「とりあえずこっちは問題なさそうね。じゃあ、こっちの戦略を伝えるわ。」
「ですが、このまま戦力差で押しきればいいのでは?」
「戦術的には問題はなくても、戦略的には全く有り得ないわね。」
私はそう言いきった。
「戦術としてならこのまま力押しで勝てますが、それなりの損害を受けるでしょう。ですが、我々の戦略的目標は攻め込むことではなくて国土を守ること。攻め込む理由がありませんし、損害を受けてからの建て直しを考えると得策ではありません。よって、無意味に攻撃することを禁じます。対処戦術だけで結構です。敵援軍が来ても、防御戦術を徹底してください。」
私が軍団長に厳命する。だが、あの目は抗命をするつもりね。
「アレックス。」
「はっ。」
「あなたに監督を命じます。もしデオトリス軍団長が抗命した場合、処罰をする権限を与えます。」
「わかりました。」
「か、閣下。私が信用できないのですか?」
「信用できないわね。今のあなたの目は私の命に反しても手柄を挙げればいいと考えてる目ね。目の前の簡単に挙げれる手柄を狙って動いて大きな穴を空けて大失態で済めばいいけど、それ以上の戦犯になりかねない危険な目ね。」
「軍人が戦功をを求めて何が悪いのですか。」
軍団長がそうぬかす。だから軍団長止まりなのに。
「今回の戦争、戦功第一になるのはさすがにベリッサ渓谷のほうですけど、戦功第二にはここの防衛を完璧にこなせばなれますね。それほど重要な場所ですよ、ここは。」
「うっ。」
「相手の狙いはただ一つ。我が国の王都への直接攻撃です。これが成功してしまうと我々の敗北です。戦力の7割をベリッサ渓谷の方に回している以上、ここを抜かれては我々の敗けになります。なにせベリッサ渓谷よりもこのヴォルス平原の方が王都に近いですからね。」
ヴォルス平原から王都まで少数精鋭の強行軍なら2日、通常の行軍でも4日で移動は可能だ。ベリッサ渓谷からだと渓谷からバグマン伯爵領の領都まで3日の行軍、そこから王都までは4日で、合計7日間かかる。両方の戦場が元々対帝国のために配置したバグマン伯爵領内なので面倒が少ないのは幸いなんだけど……。
「ここを通られたら、防衛責任者は首を切る必要がありますね、物理的に。」
「物理的に!?」
「ええ、物理的に。」
私は手刀で軍団長の首を叩く。
「こう飛ばしますね。」
「ひっ!」
腰を抜かす軍団長。この程度で腰を抜かすなんて使えないわね。
「ともかく、あなたはここをガッチリ護りなさい。私はベリッサ渓谷に向かいます。」
私はそう軍団長に告げるとベリッサ渓谷へ向かって移動を始めるのであった。
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旧第31話以降は、一旦取り下げさせてもらいました。
ストーリー上のタイミングを見計らって微調整して再投稿する予定です。
最強の王妃 中城セイ @Sei_N
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