第16話 さいきょーに……
特別特急なんとか委員会が行われた数日後、住民投票が行われ、意義無しで全会一致となり可決。
その数日後には周辺諸国へ公布され、正式にワルボン公爵はお縄につくことになった。
「いやぁ〜、ちかれたちかれた」
色々予定と違ったこともあったけど、なんとかやり過ごせて良かった。
「…………」
ソファーにぐでーっと横たわる俺を、隣りに座ったナサちゃんがなんとも言えない表情で見つめてくる。
「でも、ナサちゃんが無事でいてくれて本当に良かった。うん、やっぱりかわいい。」
俺は相変わらず顔も声すらもわからない少女に向かって、そう微笑む。
「……▲▼◀△▽▽△◆……………」
彼女の透き通るような髪を見つめていると、なにか聞こえたような気がした。
「ん?」
「……▲☆◇★▽◇☆▲▽▶…………」
聞き返すと、かすかにナサちゃんの口が動いているのがわかる。
ッ!!!!?
マジか……!!!!?
「ゆっくりで大丈夫。俺は、ここにいるからさ。」
俺は思わず飛び起きて、少女の近くに耳を寄せる。
「……なんで、私を助けた……ですか……」
少女は、か細くたどたどしく、まるで子供のように囁いた。
「なんで。なんでねぇ。なんでと言われたら難しいけど、やっぱりあれかな。」
俺はドクドクと波打つ心臓を無視して、その問いに答えようと考える。
「君が好きだからかな」
出てきた答えは、非常に単純で、ずっと言っていることだった。
「いやいや、そんな顔しないでよ。参ったなぁ……。」
ナサちゃんが俺を見上げるので、ずっと被っていたフードが半分くらいめくれている。
そこから覗く彼女は、まるで泣きそうな顔をしていた。
「俺さ、ずっと適当に生きてたんだ。目的もなく、死ねないから生きているみたいな感じで。本当に空っぽで、退屈な人生だった。」
刺激のない日々が、ただただ過ぎていく。
その感覚が、嫌で嫌でたまらなかった。
「そんな俺を、君が救ってくれたんだ。君に出会ってから世界が鮮やかに見えて、生きようって思えたんだ。」
彼女に出会ってから、何もかもが変わった。
たしかに、お金を使う量は圧倒的に増えたけど、それでも彼女と向き合っている時間は、俺の生きる意味。まさしく、人生に差し込んだ一筋の光だった。
「だから、その恩返しでもある……かな」
俺がそう説明すると、少女は納得したようなしきれないような顔で、相変わらず泣きそうにしていた。
「それに、かわいい女の子には笑っていてほしいじゃん?」
俺はそう言って、取れかけている少女のフードを取った。
「……あ、ありが、と……う……」
彼女はその丹精に整ったまだ幼さの残る顔を、波で濡らしながらつぶやいた。
素顔を見るのは初めてだけど、何故か初めてみたような気がしなかった。
まるで、昔からずっと知っているような、そんな謎の感覚があった。
「どういたしまして。ほら、泣かないで、笑って見せてよ。」
俺はそう言って、ニーッと大げさに笑って見せる。
「…………は、い…………」
そうつぶやいて、少女はぎこちなく涙を目の端に残しながら、だけど確かに笑ってみせた。
「ほらね、やっぱり。最強にかわいいじゃん。」
そうだよ。
君は、俺の大好きな君は。
例え、顔が見えなくても。
声が聞こえなくても。
泣いていようとも。
笑っていようとも。
いつだって。
どんなときだって。
さいきょーに “ かわいい ” に、決まってるんだ。
ー完ー
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
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ソシャゲの世界に転生したので、断罪予定の推しキャラ『銀髪無口クール聖女』をひたすらに愛すことにする 〜カム トゥー ライト〜 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n
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