第15話 断罪イベント!!! ー後ー


彼は体の後ろで両腕を縛られながらも、俺を睨みつけている。

おぉ、怖い怖い。


「彼は、ナサ様を魔法都市代表の座から引きずり落として、自分がその座に座るために犯行を犯しました。彼は川の上流にポイズンスライムを配置し、街を毒だらけにしました。そして、それと同時に勇者などを用いて、それらの犯行のすべてをナサ様の仕業にしようとしていました。」


「しょ、証拠は……!」


反論を述べようとするワルボン公爵の言葉を遮り、俺は話を続ける。


「証拠はあります。町の住民からの聞き取り、及び街に設置してある記録の魔道具などを遡った結果、あなたが川の上流へと向かう姿は確認できました。そのとき、なにか大きな袋を持っており、降りてくる頃にはそれがなくなっているところもしっかりと確認済みです。そして、データを調べた結果、あなたが川の上流に向かった日の翌日から、川の毒素の濃度が増加しており、その一週間後には住民に健康被害をもたらすレベルまで達しております。どうですか?」


どうやってポイズンスライムを出現させたか気になるよね。

俺も不思議に思った。


あんな数のポイズンスライムどうやって用意したのか。

でも、仕組みはとっても単純。


持っていくのは二匹くらいでいいんだ。

その二匹を十分水のある場所に置く。


するとあら不思議、一時間後には二倍の四匹、二時間後にはさらに二倍の八匹…………と指数関数的に増えていくらしい。


まぁ、無限に増えるわけではないので上限はあるみたいだが。


「く、クソ……。そ、そんなデータとってあるはずがない!! デタラメだ!!」


俺の言葉にワルボン公爵が噛み付いてくる。


ふふふ、いいよ待ってたよその言葉。俺はできる男。

しっかりと予想される反論に対するさらなる反論を用意してあるのさ。

もちろんしっかりとした根拠も添えて。


「いいえあります。現にここにはここ一年の川の水質調査の結果、ほかにも周囲一キロ圏内の魔素濃度の測定結果もあります。立会人の勇者様方どうですか? 彼はあなた達も利用しようとしたのです。これは許されざる行為だと思いませんか?」


俺は手に持った分厚い紙の束をひらひらさせながら言う。


すごいよねこれ。

なんでもナサちゃんの就任時から今までずーっとデータをとっているらしい。


いやぁ、まじで頭が上がらないね。

さすがナサちゃん。やくしてさすナサ。


「ッ……わ、ワルボン公爵の行った行為は極めて卑劣なものであり、我々としても到底見過ごせる行為ではない……。」


勇者さんは認めたくないが、渋々と言った感じにそう述べる。


くぅ〜、気持ちぃいいいいい!!!

このイキってる相手を力でねじ伏せる感じ。たまんねぇわ。


あれだな、権力持った王様とかってこんな感覚なんだろうな。

そう考えるとやべぇわ。この快楽を味わったらもうあとには戻れなさそうだもん。


「ですよね。では審議を行います。この特別特急審議会では議会の承認を採らない代わりに、魔法都市全権代理者にして代表であるナサ様の判断が議会の決定となります。そして、その結果を正式に公表し、全住民の半数以上の反対がない場合最終決定となります。ではナサ様判決を!!!」


意外としっかりとした仕組みになってんだなぁと感心しつつ、俺は隣りに立つナサちゃんに近寄って彼女の耳に口を寄せる。


「ゴニョゴニョでいい? いいなら俺の手を握って。」


俺が耳打ちすると、彼女は控えめに俺を手を握った。


うへぇ、冷たくて柔らかくて最高や。もう一生握っていたい……。


そんな気持ちを抑えて、俺は名残惜しくも彼女の手を離し、声を張り上げる。


「判決が下りました!! 被告人、ワルボン公爵は終身労働刑!!! そして、彼の保有する財産は魔法都市法に則り、半分を親族にお渡しした後、半分を魔法都市が回収いたします。この判決に意義のあるものは!!?」


会議はクライマックス。

俺は裁判長が持っている木のハンマーみたいなやつをバンバン叩きつけて周りに尋ねる。


周りはシ〜〜〜〜ンと、まるでお通夜のような静かさ。


「ありがとうございます。これにて、魔法都市特別特急審議会は閉会となります。先程も申し上げましたとおり、この結果と議事録は後日住民及び周辺国へと開示します。そして、住民の半数を上回る反対がなかった場合、正式なものとなります。それでは皆様ご退場下さい。」


沈黙を肯定と受け取った俺は、再び木のハンマーをバシバシとたたき、議会の終了を宣言した。


こうして、断罪パートも無事、幕を閉じるのだった。

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