第108話
えっと、
まず【このとおとそ】を並べ替えますよね。すると【そとのおとこ】となります。何となくわかってきたんじゃありませんか? それでは英訳してみましょう。出てくるのは……【the outside man】。この意味は【詐欺の手伝いを行う者】だと……そう言っていましたよね。
つまり、沙華彼方は……自身が the outside man だったというのを名前で示していたんだと思われます。いや……名前と言っても本名とは違うのかもしれませんね。そもそも、沙華彼方や中畑紗奈すらも the outside man から言葉遊びで作った名前なんじゃないかなって思います。ですから、どちらも偽名なんですよ、きっと。
うーん、結局【謎】は解けたはずなんですが……依然として正体は【謎】のまま残っちゃいましたね。なんだかモヤモヤとした気分です。
「どうやらお二方とも解に辿り着いたようですな。いや、今となっては……これが真実なのかどうかはわかりませんが、私もそれに気づいた時にはお二方と同じような気分になったものです」
野本さんは
「
「確かに言われてみれば……そんな感じもするね」
コムさんも同意してくれました。やっぱり同じことを思いますよね。流石、コムさんです。
「ちなみにですね、沙華という言葉は【
なんだか上手くまとめられた感じですが……そこまで考えて沙華彼方という名前を使ったのでしょうか、疑問に思います。しかし、その疑問には答えが出ません。いや、むしろ答えすら【存在しない】んでしょう。それこそが【青薔薇】に相応しいんだと……そう思います。
「そう言えば、現世では青い薔薇を作れるようになったらしいですな」
少し放心していた
「そして花言葉にも【存在しない】以外に、【夢が叶う】や【奇跡】といった言葉も追加されたそうです」
へー。なんだか意味が正反対とは言わないまでも、良い意味の花言葉が追加されたんですか。こういうのって珍しいですよね。そうなると、この……なんだか大きな【謎】が残されたまま終わってしまった事件にも、希望が持てるのかもしれませんね。いつしか、こちらの世界に来た方から……【青薔薇】事件の顛末を聞くことが出来ればいいなって思います。それこそ、
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━
最初は誘拐の文書切り抜きから始まった物語でしたが、まさかの結末を迎えてしまうと……遂に野本さんとお別れの時間となりました。
「この度は本当にありがとうございました」
深々と頭を下げるコムさん、
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
野本さんも同じようにして頭を下げてくれました。いかにも日本人なお別れシーンですね。そして野本さんは
「そう言えばですね実は、私……【お】の音の男なんですよ」
そして、こんな事を言うんです。えっと、確か野本さんの名前は
え? これってどういう意味なんですか?
「それでは……またお会いできたら幸いです」
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━(ここまで)
しかしですね……
ですが、怖いこともあれば嬉しいこともある。そして、悪いこともあれば良いこともある。それを強く感じながら過ごす事こそが……生きているって事なんでしょうね。ならば
そう願いながら、
第11話 『存在する存在しない存在』 了
死後の世界で生前譚、語られるのは謎解奇譚、理論破綻の推理譚、唖然失笑真相譚、悲嘆感嘆後日譚、ミステリーの超異譚 静 寒寝具 @saysomething
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