後日談 リナと月影3


 私達は、図書館で調べた情報をガロウさん達に話した。すると、こういった答えが返ってきた。



「申し訳ねぇが、俺はその相手をよく知らない。ダラグは?」


「知ら、ない。月影、は、知ってるか?」


「私も、心配なので、何とかしたいのですが、あいにくそんな能力を持った知り合いは知りませんね」


「そうですか……」


「じゃあ、月影さんが誰かから恨みを買った事は?」


「貴族には、大量に恨みを買われているはずですよ。何せ、怪盗は貴族中心に恨みを買いますから」


「だな。俺らももれなく貴族から恨まれているから、貴族が何かしらの恨みをぶつけるためにリナを観察していたのかもしれねぇし」


「でも、おか、しい」


「まあ、恨みぶつけるなら、俺らのはずだからな。リナにぶつけるのは見当違いも甚だしい」


「ですよね……」



 誰が、何のために、リナに向かって圧力視線をしていたのか、お蔵入りになってしまった。そのため、私達は、その場で頭を抱えることしかできなくなった。


 それは、圧力視線を感じるのは、リナだけだから。そのため、私達に心当たりがないなら、対処ができなくなった。


 私がどうしたものかと感じていると、怪盗団のアジトの扉を叩く音が聞こえた。お客さんが来たようだ。そこで、出てみると、リルちゃんがいた。



「あら、リルちゃんいらっしゃい。今日はどうしたの?」


「ルノお姉ちゃん達に、お菓子の差し入れをしたくて」


「あれ?リルちゃんお菓子作ってくれたの?」


「うん!院長先生に教わりながら、作ったんだよ!美味しいと思うから、食べて食べて」


「ありがとう。そうだ、リルちゃんも何か食べる?」


「いいの?」


「ほら、上がって上がって」


「わーい、やったぁ!」



 そして、リルちゃんをアジトに上げた。リルちゃんがリナを見つけると、リルちゃんが不思議な顔をした。



「リナお姉ちゃん、なんでそんなに顔の周り紫色のオーラ漂わせてるの?」


「「「……え?」」」


「リナの周りに紫色のオーラ……?」


「うん。ちょっと黒いのもあるけどね」


「黒色もあるの……?私達には見えないけどね」


「そうなんだ。じゃあ、私が取ってあげる」


「ちょっと、危険かもしれないので、待ってください……!」


「えーい!」



 そう言って、リルちゃんがぱっぱとリナの顔の前で手で払う動きをする。しばらくすると、リルちゃんが満足したのか、手を離す。



「よし、オーラ消えたよ!なんというか、リナお姉ちゃんをずっと見ていたのが消えたんじゃないかな?」


「「「「っ?!」」」」



 リルちゃんにその話はしていないのに、なぜバレたのだろうか。そして、圧力視線を払いのけられるリルちゃんはどうやって払いのけたのだろうか。



「リルちゃん、どうして、リナがずっと見られてるって分かったの?」


「私、能力を授かったの!それが、『邪悪なものを可視化した上でどんな能力でも除外できる』っていう能力をもらって」


「邪悪なもの?」


「うん。邪悪なものはオーラで判別できるんだよね。私が普段から見ているような人達のオーラは切っているけれど、それ以外の人達には、オーラで判別できるようにしているの」


「なるほど……」


「そして、リナお姉ちゃんに着いていたオーラは邪悪だったから、払いのけちゃった」


「でも、それだとまたリナに圧力視線が着いたら、その度にリルちゃんが取り払わないといけなくなるから、ガロウさん達は早く原因究明してほしいですね」


「うーん、能力を使った人も一応見れるから、能力を使った人を鑑定しようか?」


「じゃあ、お願いしていい?私達、本当に心当たりないからさ……」


「OK!代わりに、近いうちに孤児院まで遊びに来てね!院長先生も来たら嬉しいと思うから!」


「おう、行くのはいいが、もっと要求しても良かったんだぞ。一応、金稼いでるし」


「いいの、いいの。ガロウお兄ちゃん達に会いたい子いっぱいいるし」



 そして、リルちゃんが鑑定をした。結果は……



「水無月熊のテティさんが元々持っていた能力みたい」


「月影さん、心当たりは?」


「ありますね。数日前に、買い物帰りに世間話をして別れました。でも、それだけですよ?」


「本当に?」


「ええ。そもそも、10年前に助けたお嬢さんなので、再開しても忘れていましたが」


「というか、元々ってどういうことだ?月影にも心当たりがあるなら、そいつが犯人じゃねぇか」


「うーん、今の持ち主が違うみたい。今の持ち主の詳細を見ようとしても私の能力の成熟度だとはばかられる。だから、ここからはガロウお兄ちゃん達が調べた方が早いんじゃないかな?」


「そうだな……。じゃあ、俺らが調べてみるか。リルは危険だから、今後は注意するようにしてくれ。後、リナはルノと極力一緒にいてくれ。その間に、俺らはテティってやつの身辺調査を行うぞ」


「ガロウ、わかってますよ。犯人を見つけたらボコボコのボコにすれば良いのですね?」


「月影、程々、に」


「じゃあ、話が一段落した所で、リルちゃんが持ってきたお菓子食べましょうか」


「やったー!初めてププルパイ作ったから、感想聞きたいな!」



 そうして、リルちゃんが持ってきたププルパイを食べたが、めちゃくちゃおいしかった。相当練習した事が伝わってきて、楽しい時間を過ごした。


 なぜ、リナに圧力視線をかけたが分からないが、できるだけ早く決着が着くと良い。


 ※ププルパイとは、日本で言うところのカスタードアップルパイです。カスタードアップルパイはこちらの世界では呼び方が浸透しなかったため、ププルパイと呼ばれるのが一般的だと言われています。

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宵闇怪盗団に花が咲く 月桜 兎 @784136

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