ついに実現か? リアルヒーロー

アーカーシャチャンネル

きっかけは、とあるつぶやきから

 それは、日曜日の出来事だった。たったひとつのつぶやきが、予想以上に伸びているのである。


 炎上するようなつぶやきでもないので、この時はスルーを決めている人物も何人かいるレベルだろう。


【この時期にありえない】


【何かの間違いだろう】


【有名人の炎上などの話題以外が、ここまで伸びるのか?】


 様々な意見もあるのだが、ここはSNSなので一般的な常識は通用しないのだ。そして、この出来事が起こる数時間前にさかのぼる。



 あるバーチャル配信者が投稿したつぶやきには、こう書かれていた。


『ヒーローが見たいのだが、どれを見たらいい?』


 このつぶやき自体は有名なコピペが由来の物だが、書かれているヒーローの名前はコメントでも困惑するものが多いのが、このつぶやきの内容が難しいことを物語る。


【聞いたことある名前だが、そのヒーローはカテゴリーとしてはローカルヒーローでは?】


【アニメや特撮のヒーローを指すのかと思ったら違った】


【この人物はヒーローが本当に実在すると思っているのか?】


【ローカルヒーローは実在する。一言でフィクションでは片づけられない】


 他にもヒーローが実在する事に懐疑的な意見が目立つ。ローカルヒーロー自体は実在し、認知されているとばかり思っていたら、この反応である。


 これには彼の方も頭を悩ませる問題なのかもしれない。自分がなりたいのは、むしろバーチャル配信者ではなく……ヒーローだから。


「こうなったら、奥の手を使うしかない」


 彼はとある場所へとアポを取り始める。そして、ヒーローを認識していない人たちに、ヒーローとは何なのかを教えようとしていたのだ。



 数日後、埼玉県某所、ARゲームなどを町おこしに使用している某市の協力を得て、彼は一人のローカルヒーローを誕生させたのである。


『SNS炎上は許さない! SNSの平和は俺が守る!』


 デザインこそは他のローカルヒーローと似たり寄ったりな気配はするのだが、それでも彼には違う個所があった。


 SNS炎上を敵とし、それをモチーフとした怪人と戦う、強い意志はSNS炎上がきっかけで生み出されたもの、炎上商法を繰り返す勢力は許さない……それが彼のヒーロー像(という名の設定)だったのである。


 名前こそは発表されていなかったが、リアルの場所で行われたこのヒーローお披露目会は話題となったのは言うまでもない。


【あの場所、リアル会場だよな】


【しかし、数日でリアルスーツを作れるとは思えないし、他のスーツをリペイントしたり改造した形跡もない】


【一体、あれだけのローカルヒーローを数日で発表するなんて】


 SNS上でもコピペのつぶやきから数日後に『本当のヒーローを披露する』という趣旨の発表を行っていた。


 それを本当にやってしまう事に驚きを隠せず、SNS上で彼は間違いなくヒーローとなったのである。



 実際の仕掛けと言えば、アポを取ったのは某市のイベント受付であり、そこで彼はとある趣旨を伝えた。


「SNS炎上防止の活動をするためのキャンペーンを行いたい」


 このイベントを普通にやっても、視聴者は炎上を逆に起こしかねない。有名芸能人をキャンペーンに起用した方が早い、という意見も出る可能性もあった。


「キャンペーンには、このヒーローを使いたいのですが」


 彼が提示した物、それは先ほどのイベントで登場したヒーローである。デザインはラフというわけではなく、彩色もされていて完成に近い。しかし、これを今からスーツを作るのであればイベントの日時的にも間に合わないだろう。


「そこで、あの会場で使用しているAR技術を使いたいのですが」


 AR、拡張現実と呼ばれる技術を某市では地域貢献などの活動でも使用している。それを利用してローカルヒーローを作れないか、そう彼は考えたのだ。


 最終的にバーチャル配信者である彼は別の意味でも『私だけのヒーロー』をバーチャルヒーロー配信者という形で実現、SNS上でも悪意あるような炎上のつぶやきは多少減っていく。



 彼の戦いは、これから始まるのだ。

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