綱渡り

つくお

綱渡り

 こんな夢を見た。

 渓谷に渡したロープの上を歩いていた。

 向かう先は霞んで見えず、もと来た方も遥か地平線の彼方に消えていた。ときどき谷底から強い風が吹きつけてきた。命綱もつけていなかった。

 とにかく前に進むしかなかった。

 足は震え、ほんの一メートル進むだけでも体力を消耗した。時間もかかった。いくら行っても端は見えそうになかった。

 遠くに鳥が見えた。鳥は真っすぐこちらに飛んできた。

 鳥ではなく、ドローンだった。

「郵便です」

 搭載されている音声アプリが喋った。

 機体にぶら下がった袋から葉書を一枚取り出した。裏面に「あと少し。がんばれ」と書いてあった。

 顔をあげて前を見た。全然あと少しではなかった。

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綱渡り つくお @tsukuo

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