金魚

つくお

金魚

 こんな夢を見た。

 どんなもこんなもなかった。

 目が覚めて電話をした。

 不通だった。

 他に誰も夢のことを話す相手がいなかった。

 外に走り出た。

 通りの向こうにみんながいたが、渡る場所がどこにもなかった。

 ここにいては危険な気がした。

 誰かが追いかけてきたのであわてて逃げた。

 地下はぬかるんでいた。

 何かに足をとられて水の中に落ちた。

 水よりもねっとりした液体だった。

 顔まで沈むと鼻や口から液体が入り込んできた。

 息ができなかった。

 もがき苦しんでいるうちに川岸に打ち上げられた。

 電話が転がっていた。

 出てみると誰かが夢の話をしていた。

 自分の見た夢とそっくりだった。

 そのことを伝えようとすると舌がもつれてうまく話せなかった。

 いつの間にか相手の意識に滑り込んでいた。

 覚えているうちに話さなければと、とめどなく喋り続けた。

 やがて何の話をしているのか分からなくなってしまった。

 あえぎながら目覚めると、水槽の金魚が死んでいた。

 金魚は夢を見ているのだなと思った。


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金魚 つくお @tsukuo

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