ここには使命なき男たちの、不可抗力的で自分ではどうにもならない現実の場面が次々に呼び出されて来ます。例えば自転車男は、バーベキュー場所までなぜ二時間もかけて自転車で来たのかと友人に問われてうまく説明できませんが、それは、「君はなぜそんな風に生きているのか」と訊かれて答えられないのと同じことかもしれません。「a man with NO mission」とはよくぞ言い得たと、エピソードごとに唸らされるでしょう。
なんとなく、エドワード・ゴーリーの絵が似合いそうな作品。ただただ淡々と語られる後味悪い物語が、じわじわと心を浸食してくる。癖が強いというほどじゃない。だから読めてしまう。でも癖になる。忘れられない……。