フラワーポット
つくお
フラワーポット
女はいつも植木鉢を抱えていた。道を歩くときも、買い物をするときも、バスに乗るときもだった。ある花屋が通りかかった女に声をかけ、それは何の花かと聞いた。見たことがない植物だったからだ。女は薄く笑って立ち去った。電車で女と隣り合った老婆が鉢を覗き込むと、土はからからに乾いていた。大事そうに抱えているわりには妙だと思った。
植物は女の細い腕で抱えるには無理があるほどにまで成長した。針金細工のようにうねり絡まり合う枝に、左右非対称の奇妙な形の葉が不規則についていた。枝葉の様子に気を取られ、女が次第に痩せ細っていることに気づくものはいなかった。
ある子が公園のベンチに座る女に近づき、その不思議な植物を見上げた。それは離れたところから見ると人の形をしているようにも見えた。子どもは根っこが鉢の底穴から出て、女の腕に深く根を下ろしているのに気づいた。はっとして顔をあげると、女は干からびた顔をして息をしていなかった。
フラワーポット つくお @tsukuo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます