帽子

つくお

帽子

 とても変わった人がいた。頭に帽子をいくつも重ねてかぶっていた。何のためにそんなことをするのか聞いてみると、深くまで潜るためさと答えた。誰も意味が分からず、みんながその人をバカにした。その人はどこに行っても決して帽子を脱ぐことはなかった。

 町のどこからでもその人がどこにいるか分かるくらい帽子が高く重ねられた頃、その人は海に行った。みんな、何が起こるのだろうと面白半分についていった。

 その人は帽子をかぶったまま海に潜った。帽子が一つ、また一つと水面に浮かんできた。やがて、かぶっていたよりたくさんの帽子が浮いてきて、水面は帽子に埋め尽くされた。いくら経っても、その人は海からあがってこなかった。

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帽子 つくお @tsukuo

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