作詞対策委員会
西紀貫之
作詞対策委員会
「『答えを出さずに、いつまでも
ブブー!
「くそう、文字を変えてもマギラワシイ認定か! なんて恐ろしいんだ、昭和って時代はヨぉ~!!」
仕方ないのだ。
JASRAC帝国は古の昭和から歌謡曲の著作権を歌詞も含め厳重厳格に守り抜いてきたのだ。その管理コンピューターが統合され、今の私、作詞対策委員会端末になったのだ。
作詞家たちは自分が考えた詞が著作権に抵触するかしないかを、こうやって事前に私に問い合わせ通信をすることで権利侵害を犯さぬようチェックするのが通例となっている。
しかし人の情、思春期から晩年まで、出会いと別れを歌う作品の多いことは事実。人類にはそれを糧とし、さらなる進化を遂げてほしいものである。
「くそう、もうデータベースも枯渇。なんてワードで歌ったらいいんだ」
いつの世も、人は人を求める。
大いに悩むが良い。
「『お主に出会えてよかった――』」
ブブー。
古語っぽくしてもダメです。
「『プロージット! 君は人生の大きな大きな』」
ブブー。
グラス割るSE入れてもちょっとダメ。とくに最後の大きなのとことか。
「『パっとサイゲリア~』」
ブブブブブー。
その作詞家の作品は危ないです。
「『この先もずっと~』」
ブブ。
平成も遠くなりましたが、昭和以上ですよそのあたり。
「ここは私に任せたまえ。『えぱだたあずましい~』――」
……OK。
しかし無意味な文字列では?
「つ、津軽弁か」
「津軽弁?」
「寒い地方は口を大きく開くと腹まで凍るといわれ、あまり口を開かず話せる方言が発達したといわれている(※俗説です)」
わたしは管理者。そこまではあずかり知らぬ処です。
「そうか、じゃあ私は薩摩で!」
「たしかに地域によっては何いってるかわからないもんなあ(※個人の意見です)」
その後、よく分からないものがきましたが、ホントいっぱいきましたが、だいたいセーフでした。
こうしてある時期、出会いと別れ、ラブソング、そのあたりの量が一気に増えたのですが、面白みが消費期限を迎えるや衰退していったようです。データ見たら、ですが。
売れなかったんですね。
翻訳歌詞を併記するあたりも許可、または不許可だが原点明記の転載料を科すとかいろいろありましたが。
「『校庭で君を見ていた――』」
ブブー。
はいだめー。
作詞対策委員会 西紀貫之 @nishikino_t
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます