放課後

 同窓会も終わりに近づいていた。ヒュー、ヒュー、という高坂の荒い息が賑やかな間に流れていく。酒の空いたグラスに囲まれて泣く恩師の姿は実に惨めだ。

 「……で、さ。先生」

ぼくは咽び泣いている高坂の顔を見る。

こんな奴がぼくの憧れだったのか。馬鹿らしくなってきた。

 「実はさ、ぼく、今日とっておきのことを考えてたんだ。みんなも聞いてくれる?」

そう言うと、酔ったクラスメイトは、おー、わー、とかいう黄色い声を出した。その中で高坂だけはまだずっと泣いている。いつまでコイツは泣いているのだろうか。いい加減泣き止めばいいのに。

 「あのねー!」スゥ、と息を吸い込んだ。

とっておきの、理想は目の前にあるんだ。

 「……今日から、ぼくが先生になるんだ」

「せんせい?」高坂の声は震える。

「うん、そうだよぉ。ぼくがこの3年B組の担任になるんだぁ、だからこの教室はぼくの物になる。だからこの教室はぼくの指示ですべてが動く。とっても素晴らしいユートピアになるんだぁ。だってさ、誰もがこれまで以上に理想通りに動いて、理想通りに死ぬ。全員が宮村亮太のようにぼくに全て従うんだ。誰も反抗する者はいない。それって、すごく素敵なことでしょう? あは。あーあ、すごいなぁ、嬉しいなぁ……」

「いやだなぁ、先生は、お前だったじゃないかぁ」信者が一人跪いた。

「先生、俺はどうすればいい? いつも通りに教えて」また一人。

「せんせぇ、私に早く授業を教えて!」

先生先生先生、と目を虚ろに靡かせ、更に落ちていく。

 ここが、ぼくの楽園となる。なんて幸せなんだろう。争いも憎しみも何もない、たった一つの楽園。

ぼくが望んでいたもの、そのものだ。

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ぼくらの先生 @Concert27

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