フェニックスによる無限焼き鳥生成実験
脳幹 まこと
5年3組 ヨシダリウス・ケンターロヴェ
死期が近づいた
そこでぼくは「肉を削いでから生き返らせ、肉がまたついてたら、肉が無限に手に入るじゃん」と考えました。
ペットのチュン子はお父さんとお母さんからプレゼントされた不死鳥でした。すごくキレイな赤色の体をしていて、ぼくにもなついていました。一番の親友でしたので、この実験には向いていると思いました。
オリの中に入りました。チュン子はぼくと一緒に飛ぶものだと思って、大人しく身を委ねてきました。ぼくは注射針を彼女の首元に刺しました。少しして、彼女は飛びました。
暴れないように彼女の体をワイヤーでぐるぐると巻きました。その後、定規くらいの短剣を持ってきて、彼女の胸肉を削ぎました。甲高く鳴きました。
お父さんとお母さんに気付かれたら大変なので、ぼくは彼女のくちばしにしっかりとワイヤーをつけました。彼女の目からは涙がこぼれていました。
それから二、三回ほど胸肉を削ぎました。動きが弱まっているのが分かりました。そろそろ死ぬんじゃないかと思ったので、火を起こしました。ワイヤーを外すと一目散に千鳥足で火に飛び込みました。
どうしてそんなことしたかというと、不死鳥は、自ら死に向かわないと生き返らないし、火に飛び込まないと生き返らないし、その際は死にかけでないと生き返らないことを、ピー子やキャー子やクックドゥードゥルドゥー子の死で知っていたからです。
灰から生き返ったチュン子には胸肉がついていました。
もも肉も試したし、手羽先も、ぼんじりも、軟骨も、レバーも試しました。
そのたびに彼女は甲高く鳴きました。ぐったりしながら火に向かうので「がんばれがんばれ」と励ましました。
生き返ると、また肉はついているのです。ぼくはそれらを焼いては食べ、焼いては食べました。ほどよく塩がきいていておいしかったです。
やろうとすれば無限に焼き鳥が作れるなあと思いまして、実験がうまくいってうれしかったです。
しばらく試していると、ぼくは燃えているときに2つに分けたら、2匹になるんじゃないかと思いました。
ぼくは全身に防火服を着て、チュン子に近づきました。おびえているようでしたが、きっと防火服が怖かったからだと思います。
短剣を刺しました。急所は外しているので、死ぬことはありません。いつもどおり火を起こしました。彼女は鳥の頭なので、いつもどおり火だるまになります。
そこにぼくも入りました。灰になるまでに彼女を2つにする必要があります。肉も骨も内臓も、どれ位力を込めれば分けれるのか知ったので、あつい中、上と下に分けました。
こうして、上のチュン子と下のチュン子となって生き返りました。
とはいえ、上のチュン子は足がないからその場でじたばたするだけだし、下のチュン子は頭がないのでその場でふらふらするだけでした。
それは面白くなかったし、お父さんとお母さんに怒られるので、1匹に合体させようと思いました。
しかし、上のチュン子は足がないので、火に飛び込むことができません。どうしようと思ったので、木工用ボンドを持ってきてくっつけました。
しかし、下のチュン子の様子がおかしくなりました。なんだか変な臭いになってきたし、足がぴくりとも動かなくなってしまいました。
保健の時間で、心臓は体じゅうに血液を送る働きがあると勉強しました。下のチュン子には心臓がないから血液がくさってしまったのかもしれません。
上のチュン子の様子もおかしくなり、死にかけているのにもう火には飛び込まなくなってしまいました。
そのまま上のチュン子も死んでしまいましたし、もう生き返ることもありませんでした。
せっかくくっつけたのに、ボンドがもったいないと思いました。
ぼくはチュン子を焼こうとしましたが、お父さんが昨日食べていた「くんせい」が気になったので、調べて、料理して、食べました。
焼き鳥の方がずっとおいしいと思いました。
フェニックスによる無限焼き鳥生成実験 脳幹 まこと @ReviveSoul
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