第7話

結局話し合いはいい方向に行かないまま終わった。


数日経った後、

祖母は怪しい行動をしていた。

封筒やハガキがポストに届くとそれを持って部屋に隠して持っていった。

その行動に私はなんとも思わなかった。

大切のものだと思ったからだ。

母はずっと部屋にいた。

その頃から私はなぜか毎日何をしてても大人の顔色を伺うのが癖になっていた。

大丈夫とか言われても嘘だと思ってしまうようになった。


夜になり父が帰ってきた。

祖母と2人でコソコソ話していた。


その瞬間母のところに行った。

私はその後ろをコソコソついて行った。

母の元に行くと父は母の顔を叩いてすごい勢いで怒った。


「お前どこから金借りた?」


母は泣いていた。

私はびっくりして泣いてしまった。

声を出さないように必死に声を押し殺した。

打たれて可哀想。

そう思って泣いた。


母は何も言わなかった。

父は気が狂ったように怒鳴っていた。


「消費者金融に金借りた挙句、返しきれなくて闇金にまで借りただろ?

家族崩壊させたいのか?

黙ってないでなんとか言えよ!」


闇金とは一体なん何か。

私は何も知らなかった。

トータルでいくら借金したのかは言わなかったのでその時はまだわからなかった。


私はリビングに戻った

泣いている顔を元に戻さないといけないのにそんなことは忘れて普通に戻ってしまった。


「話聞いちゃったの?」


祖母に話しかけられた。


「まだ小学生だから言ってもわからないと思う。

ママが打たれて可哀想って思ってるかもしれないけど一番可哀想なのはパパなんだよ。

ママはやってはいけないことをしてしまったんだよ。

パパは家族が大好きだからどうにかしたいと思って頑張ってるから、パパを嫌いになってはダメだよ。

大きくなったらパパからちゃんとお話してくれると思うから。

それまで待ってあげて。」


優しい声で祖母が言うので私は泣いてしまった。


小学生の私に祖母は優しい言い方をしてくれたけどなんとなく話はわかっていたので父が悪いと思ったことはなかった。


次の日から両親と祖母祖父は親戚の家にお金を借りに毎日出かけていった。

その間、私たちは従兄弟の家にお泊まりに行くことになった。

お金を借りにいくとは子供の前では言わなかったけど、従兄弟の母と父が電話で話しているのを聞いてしまった。


何を聞いてしまってもびっくりすることはなかった。

いい子にしていれば前みたいに仲良く家族で暮らせると思っていたから。


お金を借りるのはすごく大変だったみたいだ。

額が大金だったかららしい。


母は仕事をするようになった。

ホームセンターが新しくできたみたいでそこで働いていた。

いつも家にいたので寂しくなってしまい祖母祖父にホームセンターに買い物がてら会いによく行っていた。


いい方向に進んでいると思った矢先にまた母が借金してしまった。

だんだん、生活にも支障が出てしまい、闇金から嫌がらせを受けるようになった。


家に変な会社から電話がくるようになったり

台風の時にピザが届いたり

家の前に何台ものタクシーが来たり。


一番びっくりしたのは、弟と外で遊んでいる時にチンピラが母を訪ねてきたことだ。

今でもしっかりと覚えている。

白い車で怖い男の人2人。

おばあちゃんがすぐに外に来てくれたからよかった。

男2人は母が家にいることを訪ねてきただけでそれ以外は何もしてこなかった。

今日あった出来事はパパには言わなかった。

祖母が言うだろうと思ったし私がいうとまた喧嘩になってしまうと思ったから。


固定電話の電話番号が色々なところに流出してしまったので電話番号を変えることになった。

学校の黒板に私の家の電話番号が変わったと大きく書いてあるのを見ていつも恥ずかしかった。

連絡網の時に必要になるからと先生が大きく書いてくれるのはいいが早く消して欲しかった。

学校に行くのがずっと嫌だったけど家に帰るのが嫌になってしまったので友達と遊んだり話したりしている時間の方がとても楽しかった。


でも、時々考えていたのは

学校にこの前来たチンピラが来ないだろうかと言うことだった。

嬉しいことに卒業するまで1回も来なかった。


父はどんな思いで毎日を暮らしていたんだろうか。

そんなことも時々考えていた。


父はもう少し大人になってから色々話してくれた。




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