しあわせな終わりに向かって。

 妙な夢を見た。

 ひょうきんな口調の自称"死神見習い"と話す夢。

 他人と緊張せずに話が出来たのは久々で、予想以上に幸せだった。もうこれで死んでも良いって思えるくらいに。


 目を開けると、ぷぅーんと生臭い香りが鼻につく。少し気分が悪くなって、しゃがみこんだ。……昨夜のことは夢じゃなかった。


 僕は両親を殺した。いろんなことが限界で。寝ている隙に、想いをぶつけた。想いというか、重りを落とした。頭に。

 でも、逮捕されるのは怖くて……。そうだ、……あれ?僕は自殺したはずだったんだけど。


 そう思ってふと振り向くと、視界いっぱいに死んだ僕の顔。紫色に膨らんでいて、濁った目玉が飛び出していた。


『うわあぁぁぁっ!!!』


 びっくりして飛び上がると、僕の身体は文字通り、宙へと跳ね上がる。しかも、そのまま壁をすり抜けて、外へと勢いよく飛び出した。

 ぶわっと急に視界が広がった。僕のことなんて、お構いなしに天気は快晴。暖かい陽射しが僕を照らす。……いや、身体のない幽霊の僕は太陽に照らされるはずがないのだけれど。

 だけど、頭の中を掃除したような気持ちになって。僕はふわふわ飛んでいった。あてもなく、空を漂う雲みたいに。誰にも邪魔なんてされることなく……。


 ……僕が、いや、わたくしが新しい名前と例の仕事を得るのは、それからずっと後の話で。それはずっと前の話。彼方に消えても僕は僕。

 これはハッピーエンドに向かう話。

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彼方なるハッピーエンド おくとりょう @n8osoeuta

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