山の上にあるものは、

この作品は、近未来の日本を描いた作品です。

この作品の魅力は、自分の死に方に対するある種の哲学に有ると思います。

技術が進歩し、人間は簡単に死ななくなる…しかし、そのままでは人口が飽和し、生活が経ち行かなくなる、現代の社会問題に対して、この作品の日本はこのような答えを出します。
「日本人の平均寿命は88歳」
私達の寿命が誰かに決められた時、私達はどう生きればいいのでしょうか?
いつ自分が死ぬかを知っている事は幸福でしょうか?
しかし、この作品のお爺さんは、山に登ります、自分の死を受け入れ、自分の望む死に方をする為に精一杯山を登ります、そこに有るのは死ぬ事への恐怖ではなく、ある種の達成感であったと私は考えます。

祖父と孫の暖かな交流の中での登山と、ドライな死の描写……そこだけ聞くとまるで悲劇のように聞こえます。しかし、孫は祖父の死を誇りに思っています。

あらかじめ死が予定された世界の中で、自分の最後を自分で選び取り、孫に何かを残すことができた祖父はきっと幸せだろうなと私は思います。

短く、尚且つ心に残る、素敵な作品です。
1月25日 安藤栞

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