現代知識を持って転生。
というと、それで他者を圧倒するお話が多いかと思います。
事実、この作品の主人公の知識『は』中世欧州において、
隔絶した圧倒的な知識であると言い切れます。
しかし、当時の世界を一瞬で変える事は出来ません。
また、当時には当時の価値観と常識があります。
余りにも圧倒的な知識は、当時の人は理解出来ない。
そもそも説明する土台の知識すら当時には存在しない。
当然の事でありながら、案外見過ごされがちな事です。
現代の常識と中世の常識の齟齬。
それしっかりと描き、でありながら硬くなり過ぎない。
一人称視点とそれらが良く噛み合っていると感じました。
そして、この齟齬は作者に知識が無ければ書けません。
更に、この作品は歴史物語。
絶対に逸脱出来ない基本的な歴史の道があるのです。
歴史をなぞりながら、創作を組み込んでいく。
こちらも、中世欧州の歴史的知識が無ければ書けない。
転生物語であると同時に、中世欧州と技術を学べる。
そう言った意味でも、実に面白い作品です。
作者様の知識量に脱帽の一言です。
なお、主人公の主目的はじゃがマヨコーンピザです。
え?何言ってるか分からない?
上記のレビュー文と温度感違う?
読めば分かるよ、本当に分かるから!
はたして、主人公は目的の物を食せるのか!
鳳翼下の雛まで読了したレビューになります。
現世で農業高校の教師をしていた30代の女主人公は、教え子カップルを庇って馬に蹴られて中世ヨーロッパに転生してしまいます。始まりがシュール過ぎてもう面白いです。
そして肝心の転生先ですが、中世ヨーロッパ「風」ではなく、中世ヨーロッパ。魔法も便利な道具もご都合主義もない、不便極まりない中世ヨーロッパ。しかも男の子の赤ちゃん、ジャン=ステラに転性。きっと、第1話の一行目で吹き出すことでしょう。
ステータスオープンはできないし、ファイアーボールも出ない。だって異世界じゃなくて中世ヨーロッパだもん。
そんな世界で2歳になったジャン=ステラはピザが食べたくなってしまいました。でもまだアメリカ大陸は発見されてないし、トマトもない!こうなったら自分で大陸を目指そう!そして預言者と神託を受けた前世の記憶持ち2歳児による知識チートが始まる……!
というところなのですが、知識チートと言っても小難しいことはなく、全て身近に思えるちょっとした知識です。トリートメントを作ったり、テディベアを作ったりじゃんけんを教えたり。ものすごい深い知識でなくても無双できる。これこそ知識チートなのではないでしょうか。
でも、作者様の描く中世はとてもリアルで、まるで教科書を読んでいるみたい。書く側の知識があってこその知識チート。でも読者が置いて行かれないようにところどころクスリと笑えるポイントを作ってくださっているのもありがたい!
歴史小説が好きな方や、中世ヨーロッパイメージの異世界を書く人にも参考書としてお勧めしたい作品です。ぜひご一読ください!
魔法のある世界での知識チートはよく見かけます。
火魔法だったり、水魔法だったり。
燃焼の知識や物理法則をもっともらしく語って魔法でチートを達成する。
こんな小説は飽きるほどみてきました。
あるいは、歴史改変ものでは、歴史の授業で習ったような知識を使っての知識チートを行っています。
それは皆さまお馴染みの桶狭間だったり、本能寺の変だったり、黄巾の乱だったりするわけです。
ですが、そんな知識が役立たないような時代に放り込まれた主人公はどう知識を活用すればよいのでしょう?
この小説は魔法のない世界で現代知識がどのくらい利用できるかのお手本になるのではないかと思います。
知識チートとはなにか。それが気になる方は、読んでみてはいかがでしょうか。
読む時間を割く価値があると思います。
現代から中世の北イタリアのトリノ辺境伯の四男ジャン=ステラに転生した主人公が、美味しいピザを食べるために新大陸を目指す歴史改変ストーリーです。
生まれた日に星が輝き、神の言葉を代弁する預言者の誕生として聖職者たちを騒がせたジャン=ステラですが、中身は普通の現代人。
まだ発見されていないアメリカ大陸を目指す理由が、トマトやトウモロコシ、ジャガイモが食べたいからという食い意地のはった理由なのが可笑しいです。
大型帆船を建造する資金を得るため、現代知識を活かして金儲けのアイデアを捻り出す息子に父のオッドーネと、母のアデライデは戸惑いつつも、トリノ辺境伯家の発展のために彼の知識に頼るようになり……。図らずも歴史の針を早回しするジャン=ステラの行動は思わぬところに波紋を広げていきます。
言語や宗教、民族、文化、そして国際情勢、当時の時代観が描かれていて、歴史の解説本を読んでいるかのようです。
幼くして即位したハインリッヒ4世によって揺れる神聖ローマ帝国の中でジャン=ステラが如何に立ち回るのか、今後の躍進に期待です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)