KAC20227 7回目 お題 出会いと別れ

いわゆる「アウティング」というやつだ。しちゃダメなやつ。ダメ。絶対。


「男と結婚したいとかいってる馬鹿なヤツ」というとこまではまだ…いいとしよう。

問題は…。

己の小学校時代からの趣味「パンチラコレクション」のことをオサレ居酒屋で大声でアウティングするのは、

やめてあげてえ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!


己が男と、きくちゃん(今は木久扇、当時は木久蔵)と「結婚したい…♪ と思ってんだよね…」なんてついうっかり打ち明けちゃったのは焼き鳥盛り合わせタレ&塩ミックスでこじらせかけていた「鶏皮塩焼き不足」が解消されて心がほぐれ、さらにまた、ちびちび飲んでたカシスウーロンでほろ酔い気分になってたせいもある。

サークルを同じうした学生時代、己の方では「心友」と思っていたものの、幼なじみの彼女の方は自身の女王様気質が発揮できる体の良い「セフレ」と思ってたフシがあるから、それ(アウティング)ももしかしたら「プレイ」の一環だと、おしおきプレイの一環でちょっぴりマゾっこの己を懲らしめてやろうくらいのつもりだったかもしれない…。


しかし、それが己ときくちゃんとの「愛の巣」を夢見た日々からの別れ。そして「♪こんにちは、赤ちゃん わたしがパパよ♪」生活のはじまりだった…。


飛躍しすぎてわからないむきに、もう少し詳しく伝える努力をするとしよう。文字数も6000文字までは(たしか)あったはずだ。


己は、どういうわけかわからないけど子ども時代から「エロい」話が好きだった。「男の子なんだから、エロが好きなのはあたりまえだろう」ペチ(おでこはたく音)などと苦笑いする人もいるだろう。「男の子なんだから」というところがいけませんなあ…。女の人だって、だから女の子だって「エロ」は嫌いじゃないはず。レディコミとか、BLとか女性向け媒体が多数あるわけですし。(ちなみに妻はそんなんばっかコレクションしている。なんならもう一部屋そういうもののためだけに借りとくか、くらいの勢い)

己の方に話を戻せば「お笑い」というものが、どこに笑いのポイントがあるのか、なにで笑っていいのか、さっぱりわからなかったわけだけど、エロい仕草、エロい歌詞、そんなのを男性が女性のフリしてやる「落語」とか、加藤茶の「ちょっとだけよ♪」みたいな世界がたまらなくストライクだった。そういうのを見てると、なんかあのへんやこのへんがモゾモゾしちゃって「うふ。うふふ」なんて声が漏れてくる(自分から)そうこうするうちに、そんな己を嬉しがらせてくれるきくちゃんと共に生活できたら、どんなにか楽しいだろう! と思い詰めるようになった。きくちゃんと生活するには…そうか! 結婚すればいいんだ! と思いついた次第。きくちゃんが喋るだけで、扇子をもってなんかスリだけで、己は…己は…、モゾモゾ、うふうふ。どうしよう! きくちゃんとの結婚が現実になって、そんなに楽しい生活が本当に送れてしまったら!

…そこで、だ。己の頭ではそこまで至れなかったんだけど学生時代のセフレ転じて今妻はこうのたまった。

「んで? てめえが、豚野郎改め鶏皮×××野郎の貴様がきくちゃんと結婚するとしたらだな…」

酔いが回ってなお、この先まだまだ飲む気満々のすっかり坐りきった今妻当時セフレの女子大生の目が当時男子大学生だったかよわいメンタルの己を射すくめる。

「いったい、どっちが攻めでどっちが受けがクソなおまえの望みだ! おい、言ってみろ! その口で言ってみろ! いま、この場にたまたま豚野郎、鶏皮×××野郎と居合わせてしまった、運の悪いみなさまに自分なんかが生まれてきて申し訳ないって気持ちを最大限込めて聞いていただけ。そうだ、はっきり口にしてみろ! つっこみたいのか、つっこまれたいのか!! どっちなんだ、貴様は。ああん!?」


え。え。えええええ〜〜〜〜〜〜。

ぜんぜん考えてなかったもん、そんなこと。ただ、ウフウフアハハン、毎日モゾモゾできればいいな、くらいにしか…。

答えられない己に女王様の叱責はつづく。

「この×××野郎! だから貴様は××××なんだよ! 一生×××で××××……」


当然世田谷のオサレ居酒屋ではP音ナシである。涙目の己をどやしつける女王様…。夜はしんしんと更けていった…。


己ときくちゃんとの結婚はもう一生ありえなかった。考えられなかった…。もともとないけど。ただの妄想なんだけど。

きくちゃん。本当に本当にごめんなさい。そんなこと考えてごめんなさい。妻も子もあるきくちゃんなのに…。


己は…己は…そこまで考えてなかった。結婚ってそういうものなのか。受けとか攻めとかちゃんと決めないといけないものだとか、漫才のボケとツッコミみたいに突っ込む方を決めないとイケナイとか…。ぜんぜんわからなかった。知らなかった。ウブだった。妻(女王様)に言われるまでは。

ああ、きくちゃんとの結婚生活…。うふふんあははんでモゾモゾな…。さらば己の青春。永久に「さよなら」だ。


そして。


その夜、女王様にぐいぐい引っ張られて(仲間たちの証言によると、カシスウーロン一杯で酔っ払い、泣き上戸になった己を推定Gカップの女王様がお姫様抱っこし)無理矢理連れ込まれたラブホで。

女王様は妊娠した。

騎乗位で。

そんなわけで「こんにちは赤ちゃん。己がパパでちゅよ〜」


春は出会いと別れの季節だ。


そんな娘も17歳…己55歳。

あれれ。計算が? 微妙に。微妙に合わない!? 


そう思ったろ。そう思ったべ?


そうだよ。己はなんだかんだで学生学生と若ぶりつつ、当時40近いオッサンだったよ。いろいろあったんだよ。学校いかなかったり、たまにいってみたり、歌舞伎町で遊んだり。バイトしてみたり、しなかったり。セックスしたり、しなかったり。

だって、そんなもんだろ人生て。


ちなみに妻は当時20歳そこそこだったよ。巨乳だよ。推定Gカップだよ。いまも萎まないよ。

萎まないのには理由があってな…。そこを今からいうわけだけど。


妊娠してしまった妻は仕方なく休校する羽目になった。酔うと口悪いけど実は成績優秀。将来を嘱望されていた。

ボイン(死語)はたいがいバカとかゆう都市伝説もあるけど、バカじゃ女王様はつとまらない。

(おバカな女王様は…それはそれで萌え)


そこで、だ。無事出産したら、ただちに復学することになった。たかが数ヶ月休んだところで講義についてけなくなるような頭の妻じゃない。

かくして己の方が学校を辞め(せっかくそこそこ名のある大学に受かったのに…しかも30過ぎて…)育児に専念した。

というわけで。Gカップが萎まない理由に繋がる。

「昔の高貴な女性は子どもに乳なんかやらなかったんだよ。乳母にやらせて、自分はパーティ三昧だよ」

と豪語する妻は学業三昧。ときどきセックス。つかプレイ?


己はといえば…。己の中にどんどん母性がね。芽生えていくの…。わかるの、実感するの。

ああ、己の。己のこの貧乳から乳が出せたらどんなにいいだろう! 

しゅばばばばばーん(しばし恍惚)


あんなに巨乳なのにいかにもいっぱい出そうなのに案外出せなかった妻。

腹は痛めないけど、乳も含ませなかったけど、確実に己が育てたと胸張れる大事な愛娘。いま17歳。


−−だけどね。どんなに一生懸命育てても、大きくなったらそりゃ……金だよね。

進学するにも遊ぶにも金。洋服買うにも、コスメ買うにも、美容院行くにも、エステするにも、脱毛するにも、金。なにかと金。金。金。


いや、あのまま己が在学しててもね、今の妻ほど稼げないよ。絶対に。だから、俺たち夫婦(つか女王様と下僕)の選択はけっして間違ってはなかった。

だけどね。娘のオシッコもウンチも見てきたよ。娘が便秘のときは、…ウン、いろいろ頑張ったよ。いま、いうのをやっぱり躊躇ったけど。ウン。いろんな意味で。自主規制かけたけど。妻はおむつひとつ替えたことないよ。「くっさー、無理ー」ってなってたよ。大だけじゃなく小でもかえないよ。徹底してますよ、ええ。

離乳食もつくったことないよ。なんなら、料理も掃除もしたことないよ。風呂掃除もゴミ捨ても…。

いいんだよ、稼いでるんだから。妻はハンパなくバンバン稼いでるんだから…。

己、家事育児、さほど嫌いじゃないしね。むしろ得意。


…だがね。


育った娘は稼ぎ頭の妻には媚びるけど、己にむけられる目はまるで虫けらを見る目だ。

えええええ〜〜〜〜〜。

あんなに子育て頑張ったのに。仕事の合間に家事もきちんとこなすのに。

いや、そりゃね。妻の10分の1も稼いでないからね。大口はたたけないけれども。


妻はあいかわらず推定Gカップだし、娘も妻似。いろんな意味で。生活にはたぶん一生こまんない。己が働かなくても生きていける。


でも家事はしないとね…。妻と娘だけじゃ、この家、絶対ゴミ屋敷だ……!






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