KAC20225 5回目お題 88歳参加
己の好きなお笑い芸人ていうか噺家・林家木久扇は88歳である。いや、ちゃんと調べたらまだ84歳だった。すみません。嘘吐いた。
88歳の芸能人は、黒柳徹子、財津一郎、草笛光子。錚々たるメンバーである。いや、錚々たるメンバーだから「88歳芸能人」と調べてすぐ出てきた…。あとから出てくる人は名前をきいてもわからない。顔をみても出演作がわからない。「ポリグリップのひと?」とか言っておけば3割の確率くらいで当たりそう。そんな感じ。
しかし。4年経ったら木久扇も喜寿。キクちゃんはいつまでも若いと思っていたが…。木久扇が歳とれば、己も歳とる。それが世の中の摂理。
お笑い音痴の己の笑いツボについて考察を深めた通勤電車。いま帰路につきながら、妙なことを思い出して冷や汗をかいている。喜寿にこそほど遠いとはいえ、それなりに年を経てはきた己の若くほろ苦い時代のこと…。
己の好きなお笑いというか、印象に残っているギャグというかネタは仄かにエロスが香るもの。艶笑落語、艶話なんてものを聞いてると嬉し恥ずかしさに身を捩くらせてしまう…。エロい女性を演じるときの落語家の艶かしい仕草や声音にポーっとなる…。要はシモネタ好き。シモネタ万歳。シモネタしか勝たん。
しかし、不思議と志村のバカ殿にはときめかなかった。腰元の帯をクルクル…、あーれー、みたいの、自分にとってどうでもよかったらしい。あまりエロスを感じない。
そして、好きなお笑い芸人は少々おバカちっくなキャラ。
ここで唐突に思い出した。幼少期から中高生、いや正直大学生くらいまで。
己は、そういうおバカキャラの芸人(噺家)に恋していた。結婚したいとまで思いつめた。
おバカキャラのどのへんが好きかと問われたら。いやべつに問われなくとも問わず語りにガンガンいくが、そういうキャラがふいに真剣に、マジになったら。ガラにもなくキレてきたら? きゃー! どうしよう? そういうアレだ。いわゆるギャップ萌えだ。木久扇なんざ、インテリ落語家気取ってる腹黒キャラより、よっぽど高学歴、IQ高し、と聞いた覚えが…。ああギャップ萌え。しかし、うろ覚え。嘘かもしんない。たんなる願望かも。
そんな話を在校時、同じサークルの仲間に語ったことがあった。そっと心の引出しに閉まっておいた大切なポプリを今こそ見せたい。見せるなら今。このコこそ親友、いや心友と書いて〝しんゆう〟。このコにだけ、見せたい。己の心を打ち明けたい。
「己、実は林家木久蔵がタイプでさ。こどもんときから。結婚するなら、この人しかいないって思ってたんだよね…」
−−そしたら、一笑にふされた。
「はーあ? なんかコイツ今すんげバカなこと言いだしてっけどぉ」
思い出した。その物言い。人を蔑みきった眼差し。17歳の愛娘に瓜二つじゃないか。
それもそのはず。このコこそ心友とそのとき定めた同級生こそ、なにを隠そう己の妻、その人なのである。
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