第3話 雨
シフォンケーキって
難しくって、なかなかうまく形にならない
しぼんだり
硬くなったり
技術がいる
見た目も味も
ふわふわの完成された
シフォンケーキみたいに
菊咲先生が
魅力的で他者を魅了する素敵な女性であるのは
たくさん努力の結果かも知れない
お菓子作りって最初からうまくは行かなくて
何度も何度も失敗を繰り返して
次はこうしてみよう
次はこの位やってみようって
試行錯誤して
少しずつ
形になって行く
少しずつ
成長して行く
そんな気がする
菊咲先生もたくさんたくさん練習したのかな?
決心した
先生に告白する
バレンタイン
手作りのチョコレートを持って
校門で待ち伏せした
雪がふわふわと舞っていた
先生が私に気付く
「何してるんだ?水原」
「雪、被ってるぞ」
さりげなく、先生が私の頭の雪をはらう
深呼吸して先生にチョコレートを渡す
「先生、これ…」
先生は、一度チョコレートを受け取る
「ありがとうな、このためにわざわざ?」
勇気を振り絞って
言葉を続けた
「好きです…」
真っ直ぐ先生の目を見て
「先生が好き」
先生はしばらく沈黙した後
「水原、これは受け取れない」
「俺には大切な人がいるから」
「結婚するんだ、来年」
「…はい」
その瞬間
生徒じゃなくてひとりの女性として
扱われた気がした
先生の口から
直接聞けて良かった
学校の廊下
雁宮先生とすれ違う
先生の指にもいつの間にか指輪が光っていた
チクリとトゲがささる
だけど
振り向き、思いっきり
叫んだ
「先生!幸せになってね!!!」
先生は、振り向き
ちょっと戸惑っていたけど
真っ赤な顔で
はにかんで
ピースサインをくれた
さよなら
ありがとう
初恋は、儚く散った
まだ、胸は痛む
ざわざわ
ぞわぞわする
心の底から祝福はできていないかも知れない
叶う事は無かったけど
でも、心には確実に何かが残った
小さな種
いつか笑って話せる日が来るはずだ
この恋は糧となり
美しい花を咲かせるだろう
こんぺいとうの蕾 蒼桐 光 @aogiri211101
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