おまけ 析易とミオ
高い山の頂上。
深緑の山に、薄紅の花が明るい色をつける。乳白色の雲がかかっていた。
首に紅玉をかけ、
「ミオ、きみに話さなければならないことがある」
「どうしたんだい? あらたまって」
「わたしは仙人などではない。ましてや人ではない。みにくい化け物なのだよ」
析易は胡琴をかかえたまま、袖をまくって腕を見せた。剥き出しになる、ぼこぼことした硬い緑色の
「わたしはきみをだましていた。だがわたしのことを理解し、受けいれてくれたのはきみだけだった。わたしはきみがほしいと思っている。いやだろう。こんな化け物は」
声がふるえた。ミオは析易によりかかる。
「いやじゃない。あたしはあんたとずっといるよ」
析易はミオの肩に腕をまわした。
首の
目覚めると、
首の紅玉が、血のような紅い光を放っていた。
すべては、心の中のまぼろし。
析易は胡琴をだき、うずくまって泣いていた。
この胡琴は、ミオが残していったものだ。
「ミオ、ミオ」
いつのまにか、彼の姿は若い人間の青年から、巨大な緑色の生き物に
夜の村の
無事に析易の
部屋にユンが入る。
「ミオ、明日の芸の準備はどうだ?……おい、泣いてるのか?」
ミオは目元をぬぐった。
「ユンの兄貴、大丈夫だよ」
「あいつのことを後悔してるのか?」
「ううん。ただ、あの人がひとりぼっちでさみしくないかと思ってね」
「そうだな。少しかわいそうだな」
「うん」
ミオはそれ以上なにも言わず、胡琴を弾くことに集中した。
早く彼のことを忘れられるように。
蜥蜴(とかげ) Meg @MegMiki34
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