推しカツ

横蛍

給料日の推し活

 給料日、通帳の残高を見るとちょっとホッとする。贅沢なんて出来るほどの身分じゃない。でも少しだけ自分に御褒美が欲しい日となる。


 通いなれた馴染みのスーパーマーケットに足を運ぶ。夕方を過ぎて夕食時か。少し混雑の時間を終えたスーパーマーケット内を歩いて今夜の夕食を考える。


 割引シールの張られた食材を幾つかカゴに入れて、肉がいいか魚がいいかと思案する。


「やっぱ肉だよなぁ」


 一人暮らしが長いからか、独り言の癖がある。少しいいお肉を食べたい。そう思い付くと精肉コーナーを物色する。


 ハンバーグ・ステーキ・しゃぶしゃぶ。頭の中に浮かぶメニューだけでご飯が一膳はいけそうだ。


「ふふふ、やっぱりこれだよな」


 あいにくと割引のものはなかったが、肉くらいはいい。国産豚のロース肉。これでトンカツにしよう。


 添えるキャベツも新鮮なものがいい。


 そうと決まればお会計をして家路を急ぐ。親子連れや恋人たちの楽しげな様子もこの日は気にならない。


 ああ、お腹がトンカツはまだかと騒いでいる。でもここが我慢の時だ。お風呂にお湯を入れつつ肉の下ごしらえをする。


 好きなユーチューバーの動画を流しつつ、肉の筋に切れ目を入れて、キャベツも千切りにして水に晒しておくとさらに美味しくなる。


 さて、ロース肉に塩コショウで味付けをして小麦粉・卵・パン粉の順で付けると、肉を少し置いておく。これがオレの美味しくなるポイントだ。


 よし、今のうちにお風呂で汗を流してくるか。一日の疲れが一気に出てくる。空腹が余計にそう感じさせるのかもしれない。


 お風呂上りに冷えた缶ビールを飲む。普段は一日二本までだけど、今日は三本にしようか。そんなことに幸せを感じてしまう。


 ああ、胃に流れるアルコールを感じつつ、程よく酔いを感じるとなにもかもどうでも良くなる。


 今回のパン粉は自家製の生パン粉だ。さて、お味はいかがかな。


 百七十度くらいの油で揚げる。


 香ばしい匂いがしてくると、我慢出来なくなる。キツネ色になるとそろそろいいだろう。余熱で火を通し、油を切ることも忘れない。


 ハハハ! 完成だ!!


 包丁を入れると、ザクッという音と共にちょうどよい肉が見える。


 ソースは定番のとんかつソース・特製梅ソース・チーズソースと三種用意した。


「いただきます」


 缶ビールはすでに一本がお腹に消えた。二本目を開けると、まずは千切りキャベツから頂こう。


 うん、今日のキャベツはちょっと甘くていいやつだ。当たりかな? ソースの味と絶妙に合う。


 いよいよお肉だ。


 端にちょっととんかつソースを付けると一切れをいただく。歯切れもいい。衣のサクッとした歯ごたえと肉の旨味が口の中に広がる。


 体がトンカツをいらっしゃい喜んで歓迎しているのが分かる。一か月頑張って来てよかった。そう思えるね。


 肉料理はやはりとんかつが一番だ。


 これこそオレの推しカツだね。



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推しカツ 横蛍 @oukei

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