穴底からフードファイター
ナナシマイ
1
「ああぁッ……さいっっこうね、この景色!」
そう言ってトゥフゥは両の手をバッと大きく広げ、腹式呼吸の要領でこの上なく芳しい――と彼女が信じてやまない――匂いを腹いっぱいに吸い込んだ。
せっかく吸い込んだ最上の空気を逃すまいとしばらく口も鼻も目も閉じていたが、やがて彼女の身体はもたなくなり、次の呼吸を求めて古びた空気がしゅうぅぅと吐き出される。
左右高い位置で結われたオレンジ色の髪の毛も揺れる。
ふさふさの骨でできた二つの髪飾りが光る。
「……時間が来たようね。いいわ、これはしばらくお預け。祝杯にとっておきましょ」
すっくと立ちあがると暖色系ビビットカラーのセットアップ、膝上十五センチメートルのところでプリーツスカートが揺れる。足もとは同じ色のルーズソックスに、ローファー。
どこからか取り出したファンシーなステッキを振り、トゥフゥは不敵に笑う。
「んじゃ、いっちょ悩める美食家たちを救ってきますか!」
「フッ……。まだ、まだだ。お前はもっとウマくなれる……」
妖しく口もとを歪め、コォケツァッツはわずかに水分を含んだ布の端をつぅとなぞる。今まさに目の前で彼好みの味に近づいていくそれの健気な姿に、コォケツァッツは己の腹部がうずくのを感じた。
これ以上触れていては、最後の砦たる薄い布すら剥いでしまうかもしれない。そう感じた彼は、かき集めた理性でその手をローブの内にしまい込む。
しばらく手入れをしていない髭が深く被ったフードから覗く。
首もとを飾る骨がカラカラと鳴る。
「……時間だ。仕方あるまい、しばしの別れだ。次に会うときまで俺の理性がもつことを願っていてくれ」
のっそりと立ち上がるも、暗色のローブは長くその背格好ははっきりしない。腰から下げられたハーブの束から薬のような匂いが広がった。
どこからか取り出したいかにもな長杖でタンと床を突き、コォケツァッツは皮肉げに笑う。
「行こう。無知な美食家を導くために」
そして、崖の東端より陽が覗く。
「げぇッ、髭面ぁ……」「ほぅ、サバ読みちゃんか」
二人の
*
美食の街、ウマイマイ。
街をすっぽりと覆い縦に大きく広がる洞窟は、かつて周辺の国々が食べ残しを捨てるための大穴としてのみ機能していた。天然の生ゴミ処理場である。
大穴に投げ込まれた廃棄物のなかには、工夫を凝らせばまだ料理に使えるような食材もあった。ガラ、野菜くず、はては規格外品まで……。
その現状を憂えた青年がいた。かの伝説の料理人、モタイナイである。
彼は穴底に打ち捨てられた食材を使い、大穴にゴミを捨てにきた使用人向けの食堂ウマイマイを開いた。街の起源であり名前の由来でもあるその食堂は、豪快な盛りつけと深みのある味で当時の悪環境な職場で働いていた使用人たちの胃袋と心を鷲掴みにし、大変な人気であったという。
美味しいもののある場所に人は集まるものだ。やがてこの穴底には腕に自信のある料理人や一攫千金を夢見た料理人の卵が次々とやってきては店を開き、岩だらけの穴底は街として機能するようになった。今では大通りから狭い路地裏にいたるまで、舌の肥えた美食家たちを唸らせる料理店がひしめき合っている。
全方位を高い崖に囲まれているため、街の日照時間は非常に短い。
街へ下りる手段は崖を切り崩した岩の道かおんぼろ昇降機のみ。
それでも街を訪れる者は後を絶たず、ときにはどこかの王族もお忍びで足を踏み入れるほどである。
この街は生ゴミ処理場であったころの面影など感じさせることなく、正しく栄えていた。
ウマイマイの栄華の裏には、しかし、現在進行形で人びとの営みを脅かす存在がある。
廃棄物モンスター、ダシモナシだ。
古今東西あらゆる食材が集まり日々消費されるこの街ではしかたなし、料理に使いつくされ、後は地に還ることのみをよしとされた廃棄物が出ることは免れない。常であればゆっくりと地中で分解され長い時を経てまた新たな命に生まれ変わる廃棄物も、ここ美食の街ではそうもいかなかった。
異常な速度で積み上げられる廃棄物に無念のやり場はなく、モンスターとして料理人や炊事場の破壊を行う――。
「――危ないっ! キモ☆クッション!」
トゥフゥが叫びながらステッキを振ると、ぼよんぼよんと大きなあん肝が出現した。場所はちょうど、飛ばされて放物線を描く
今まさにそこへ投げ込まれようとしている
しかし、コォケツァッツはフンと鼻で笑う。
「後先を考えない奴だな。受け止めた衝撃で街が汚れるだろう」
「ちゃんとラップを巻いているわよ! このあとは蒸して美味しくいただくんだから! ……わたしが!」
ラップを舐めないで、と鼻息荒く憤慨するトゥフゥに、後方待機の
「ラップは食材の保護にうってつけなの、わからないなら黙ってて」
「あんた、ラッパーになれるんじゃないか?」
「はぁっ!? 馬鹿言ってんじゃないわYO、わたしは魔法少女YO!」
「俺からしたらどちらもそう変わらんな」
コォケツァッツはそう吐き捨てた。「ノってあげたんだから反応しなさいよ」と飛ばされたラップを最低限の動作で避け、両手に持った長杖を身体の前で揺らす。
「……深淵の岩床に告げる。汝の身に蓄えし力、我の前に集え――」
空気が変わる。
重く、深く、旨く。
「――熟成弾」
細切れのパンチェッタが音速を超えて飛んでいく。ボッボッボッ。あとから響く爆発音。
「ほんっと陰気臭いわね……やってることは派手なのに」
「陰気臭くてけっこう。もとよりウマイマイは穴底の街、俺たち呪術師の領域だ」
魔法少女、呪術師、エトセトラ。
穴底に蔓延るモンスターから美食の街ウマイマイを守る
彼らはその意志を表す骨の共鳴探知機を常に身に着けていて、ひとたびモンスターが出現すれば迅速に駆けつけ対処する。
「海藻の残骸たち……まさにダシモナシ、といったところね」
「無駄口叩く暇があるならさっさと処理しろ。俺の帰りをアイツが待っている」
狭い交差路に二人の逃げ場はない。しかし当然、逃げるつもりもない。
どちらも不本意、といった表情で背中を合わせたトゥフゥとコォケツァッツは、手にした獲物を隙なく構え、多方面からにじり寄ってくるモンスターを睨みつける。ぶ厚い海藻を身体に持つそれはずいぶんと煮だされたようすで、ところどころ破けているのが痛々しい。
「あら奇遇ね。わたしも早い帰りを待たれてるわ――っと」
キモ☆ハグ! トゥフゥが唱えながらステッキをひと振りする。今まさに乾燥しきった海藻が向けてきた刃のような切っ先を、ふるるんとやわらかく揺れるあん肝がハグをするように包み込んだ。
途端、海藻系ダシモナシは
しかし、ダシモナシの攻撃性を奪うにはまだ足りない。
「……深淵の岩床に告げる。かつて汝の身を流れた力、我の前に集え――流水膜」
コォケツァッツの呪文に大量の水が現れ、あん肝ごとダシモナシを包み込む。ぴしゃぴしゃと水音が路地に響くこと寸刻。
へにゃりと海藻の輪郭が歪み、溶けて、消えた。
――いただきます。
その場に居合わせた人びとの口から敬意のこもった言葉が紡がれる。トゥフゥも、コォケツァッツも、みな等しく、食材のなれのはてに感謝を捧げる。
廃棄物モンスターは必要悪だ。
人びとの腹を満たし、文化の形成を支える食材。それは種を存続させたい食材にとっても都合のよいことなのかもしれない。しかし、消費されるとき、捨てられるとき。食材たちはその痛みや苦しみをモンスターとして人びとの記憶に刻み込む。
美食の街は、決してそれを忘れてはならない。
「近ごろ髭面との遭遇率が高くて嫌っ!」
「それはこちらの台詞だ、サバ読みちゃん」
「読んでないから! 健全に大人してるから! ……ハァ、どうしてこんなのと背中を合わせなきゃいけないのかしら」
後方待機の
「だいたいねぇ、髭面っていちいち文字数使うところが気に食わない! そのご立派なお名前に始まって、ソウルフードも、呪文も、全部長ったらしいのよ!」
「あんたは地の文を圧迫するほどに喋っているだろう」
次元を超えた二人の会話に、周囲はすっかり置いていかれている。しかしこれが彼らの常だ。
――
伝説の料理人モタイナイが残したとされる言葉は数多く、今もなお人びとの心を揺るがし続ける。これもそのうちのひとつ。我の強い
さて、二人のやり取りがしばらく続きそうだと判断したのか、
「圧迫なんてしてないわよ。地の文が説明好きなせいで
太陽に向かって裏ピースを顎に当てたとびっきりの笑顔を見せるトゥフゥに、コォケツァッツはこれ見よがしに溜め息をつく。
「どこに可愛い女の子がいるんだ?」
「髭面の目は節穴かっ! とうとう目から髭が生えてきたんか!? あまりにモサすぎるわッ」
「そのような想像ができるサバ読みちゃんの頭が理解できん。空洞なんじゃないか?」
綺麗に片付いていく路地と反比例するように、二人の言い合いは白熱していく。
フゥーッ! と威嚇しあうトゥフゥとコォケツァッツ。
そろそろ手足ならぬ食材が飛び出るのではと誰かが危惧し始めたとき。
「……?」
スッと差し出されたるは二杯のどんぶり。
差し出したのはコック帽を目深に被った妙齢の男。
もくもくもわもわと立ち上る湯気は料理の異常な熱さを表していたが、二人の鼻息によって一瞬で掻き消えて適温へと下がる。二人の状態と料理の提供方法を完璧に計算した温度管理をしてみせたその料理人の手腕に、離れてようすを見ていた者たちから称賛の拍手があがった。
コック帽の男は照れたように苦笑いをしつつ、ずいとどんぶりを押し付ける。
「い、いやぁ。
「そうね。あなたの言うとおりだわ」
二人の
「ああ。熱くなるのは料理人だけでいい。俺たちは冷静にモンスターを倒さなければな」
「へい、頼もしいことです。ではこれを」
炊き立ての白飯に卵とじの海藻をのせたものが今回の「勝利の料理」――消えゆくモンスターの魂を手早く調理したもの。通称
*
トゥフゥとコォケツァッツは毎日のように出現するモンスターを倒し続けた。あん肝で周囲の安全を確保しつつ、パンチェッタで確実に仕留める。その見事な連携はほかの
本人たちも不承不承ながらその練度を高めていった。言い合いをやめることはないが、互いの能力を認めてはいるのだ。
「ねぇ、髭面。おかしいと思わない?」
「なんだ、俺とあんたが組まなきゃいけないこの状況がか?」
「そう。……じゃなくて、いやそれもあるけど。モンスターのことよ」
キッとコォケツァッツを睨んだ瞳をそのまま目の前のモンスターに向ける。ウマイマイにおいて数少ない日当たり良好な一等地、大店が並ぶ通りにそれはいた。
奇形ではあるが瑞々しさの残る葉野菜からなる身体。その茂みから覗くのは文字通り死んだ魚の目。
これまでに戦ってきたボロボロの廃棄物モンスター、ダシモナシとは大きく異なる姿かたちには、並々ならぬ意思が宿っているように見える。事実、それがしているのは、ただの暴走ではなく明確な悪意を持った破壊行為だ。
「……ああ、ようすが変だ。行動もそうだが、ダシモナシというには可食部が多すぎる」
「最後の最後に残った無念を晴らすために
それでも。
「食材の叫びであることに変わりはない」
「それもそうね。いただきましょう」
しかし、モンスターは日に日に悪意を増していく。
初めは激情のままに暴れまわっていただけであったが、あるときは料理店の美食に扮し、またあるときは食欲をそそるような香りで袋小路におびき寄せ、人びとを襲うようになっていった。
「トゥフゥさん、コォケツァッツさん!」
骨に呼ばれたときだけでなくできる限り街を巡回して警戒に当たっていた二人のもとに、ぶ厚い眼鏡をかけた女性の
「最近見るようになったモンスターですがッ、この、可食部モンスター……タベテベテではないかと」
黄ばんだ紙の上で彼女が示したのは、腹の抉れた獣のようなモンスターが穴底で暴れているようすを描いた絵であった。
「伝説の料理人、モタイナイが街を作る前。この地が食材の捨て場であったことは、お二人もご存じですよね」
「もちろんよ」「ああ」
「当時、ここにはまだ食べられるようなものもたくさん捨てられていましたから、食材の怨念は強く、このタベテベテが猛威を振るっていたようです」
モタイナイはそうした可食部の残った食材をうまく料理に使うことで、タベテベテの出現を抑えていったのだ。
「ですが今、モタイナイが掲げた料理人の精神を忘れ、美食を追求するあまりに可食部を残したまま食材を廃棄する人が増えています」
「つまり――」
トゥフゥの髪を飾るふさふさの骨が光る。
コォケツァッツの首を飾る骨がカラカラと鳴る。
『大変です! 強力なタベテベテがそちらへ向かっています――二体!』
眼鏡の
張り詰める空気には評価しがたいぬめりけのある香りが混ざり。
まもなく、それらは姿を現す。
「へぇ……?」
一体は、赤みの混じる肌色をしたなにか、それがほろほろと崩れては星屑のように宙に浮かんでいる。
「……ほぅ?」
一体は、でこぼことかさついた褐色の塊、裏側は切れ味のよい包丁で切られたのか、なめらかな断面に赤みが差している。
「ねぇ、髭面」
「だな、サバ読みちゃん」
あん肝を愛する魔法少女と、パンチェッタを愛する呪術師は、互いの心のなかで固い握手を交わした。
しかしてその戦いは三日三晩続いた。
タベテベテも理解していたのだ。トゥフゥとコォケツァッツこそが美食の街ウマイマイを守る
過去と同じく可食部を残したまま捨てられるようになってしまった食材の、強者に対する妬み。あるいは、この二人ならば、という祈りに似たなにか。どちらにせよ、トゥフゥとコォケツァッツが執拗なほど狙われるという事態に変わりはない。
砂塵のごとく視界を埋め尽くす粉々のあん肝を、ふるると艶めいて揺れるあん肝が包み込む。
歪な形をしたパンチェッタの乱暴な体当たりを、みちりと硬く尖るパンチェッタが迎え撃つ。
半身ともいえるソウルフードから生まれたモンスターに襲われているこの状況に、二人の心中は穏やかでいられないはずだ。それでも眉ひとつ動かすことなく的確な処理をしていく姿はまさしく
繰り出される食材にも、次第に、ともすれば捨てられてしまうような色かたちのものが混ざり始める。が、これはトゥフゥとコォケツァッツが押された結果ではない。
「確かにあん肝はッ! あの綺麗に整えられた形をほぐす瞬間が最高だけれど! かと言って、端っこに、罪はないわ!」
「同感だな。パンチェッタの端も捨てられる義理はない」
タベテベテの劣等感に気づいたのだ。モンスターを煽るような処理は控えるべし、という判断をトゥフゥとコォケツァッツは視線を交わす一瞬のうちに下した。
「大丈夫、安心していいのよモンスター。私があなたの無念、全部食べ尽くしてくれるわぁぁッ!」
――PON☆PON☆PON☆PON!
「キモ☆ポン!」
トゥフゥがステッキを振ると同時に押し寄せてくる褐色の濁流。辺りに広がる柑橘系の酸っぱい香り。
タベテベテの本体もトゥフゥが繰り出したあん肝もいっしょくたになり、ぐるぐると回りだす。
「ポン酢の中に入っちゃえば、みんな一緒でしょ?」
彼女のまばゆい笑みに割り込むように、ジジッとなにかが爆ぜる音。
「どれ、こちらはじっくり炙ってやろうか。……深淵の岩床に告げる。汝の身の奥深くに燻る力、我の前に集え――熾火庭」
コォケツァッツが長杖を地面に突けば、そこから火が滲み出る。
地を這うようなそれは弱く、しかし決してタベテベテを逃さない。彼の繰り出したパンチェッタは踊るように転がって火に当たる面を変えていく。
「舞踏会にはさまざまな子がいたほうが華やかでいい」
とろりとまとまりだしたあん肝に。
脂の透明感が増したパンチェッタに。
二人の
「ひゃあっ」「……む?」
二体のタベテベテ――と、繰り出されて混ざったあん肝とパンチェッタ――が強い光を放った。
それは一瞬で街を、穴底を覆い、人びとにある思いを伝える。
――ありがとう、ボクたちを食べてくれて。
「いただきます」
対する二人の呟きは優しさに満ち溢れていて、温かな余韻が満足そうなタベテベテとともに消えていった。
モンスターの魂が完全にいなくなる直前、控えていた料理人がハッとしてその思念を捕まえる。
ポン酢の染みたあん肝と、ほどよく炙られたパンチェッタ。
食材の組み合わせも、勝利した
沈黙のなかでヒュンと刃が閃光のように走る。鍋底を揺らす青い炎も、ぴしゃりと跳ねる水しぶきの一滴すらも無駄になることはなく、その料理のためだけに存在していた。
モンスターが暴れた痕跡とトゥフゥやコォケツァッツが繰り出した攻撃とで乱雑に散らばっていた香りが、少しずつ流れるようにまとまりだす。
料理人の額にじわりと汗が滲み、しかし、水滴となって頬を伝うよりもさきに拭われて。
仕事を終えた両の手が差し出したるは二枚の平皿。
「三日三晩の戦いの末に勝ち取った白星を祝う料理に携われたこと、光栄に思います。此度の一連の流れを鑑みるに、僭越ではありますがこれこそが真に勝利の料理と言えましょう」
恭しく、そして謙遜したようすで口上を述べる料理人に、周囲からも賛同の声が上がる。
「さて、長々しくては麺が伸びてはいけませんな。勝利の料理は
湯気にのって鼻腔をくすぐる芳しいあん肝の香りに、トゥフゥはにんまりと笑み崩れた。
オレンジ色の髪を揺らし、ステッキをひと振り。
ステッキを持っていたはずの右手にはポン酒の詰められた瓶。左手には小さな白いぐい飲み。底には青い渦巻きが描かれている。
「これで心置きなく祝杯にあずかれるわね」
淡い小麦色の麺に絡めとられたパンチェッタのあられもない姿に、コォケツァッツはニヤリと口もとを歪めた。
伸びたままの髭を揺らし、長杖をひと突き。
長杖を支えていたはずの右手の指に、スパークリングワインの注がれた細いグラス。底から立ち上る気泡がまっすぐに線を描く。
「そろそろ理性も限界だ」
二人の
*
美食の街、ウマイマイ。
ここは古今東西あらゆる食材や調理法の集まる街であり、舌の肥えた美食家たちを唸らせる店がひしめき合う食の激戦区であり、またどんな食材でも最後の最後まで食い尽くされる食材の終着点たる穴底。
その名にふさわしく料理に対する矜持と食材に対する敬意を持つこの街で、多くの店がメニューに並べる料理があった。いわゆる、街の名物料理だ。
クリーミーでこってりしたソースからは、どこか華やかな異国を感じさせる潮風が漂ってくるかのようで。
ハーブの香りをまとった肉の欠片は強固な岩のごとく、ふわりとしたソースの味を引き締めているようで。
小麦の麺に絡めることで、特徴的な二色の味に絶妙な調和が生まれるのだ。
「お待たせいたしました。ウマイマイ名物、『勝利の料理~あん肝系モンスターとパンチェッタ系モンスターに寄せて~』です。麺が伸びる前に召し上がれ!」
穴底からフードファイター ナナシマイ @nanashimai
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