ホーム、スウィートホーム

脳幹 まこと

大宮は我がホーム


 人は自分の名前に関係するものを意識してしまうらしい。


 例えば、勇二という名前の人は、他の名前の人に比べて二個セットでモノを買ったり、勇敢な、積極的な性格になったりする傾向があるし、デントという名前は、歯医者デンティストを職業にする人物が明らかに多いのだと言う。

 統計データをわざわざ持ってこなくとも、自分と誰かの名前の一部が似ていたら、それだけで友好のきっかけになったりするだろう。


 そんなことで、引っ越しで浦和と大宮のどちらにするかで悩んだ際に、結果的に大宮をマイホームの場所に選んだのも、名字が同じだったからだろうと自分を納得させている。


 そんな理由でマイホームの場所を選ぶのかと、我ながらくだらないとも思った。

 しかし、どうだろう――両方が均等に魅力的であるのなら、最後に押し勝つきっかけとなるのは、ほんの些細な、こじつけに近いものになるのではないか。


 結果的にその選択は大成功だった。確かに会社への通勤には時間がかかるようになったし、決して安くはない費用がかかってはいる。リスクだって小さくはない。

 だが、それを差し引いても、1番のマイホームを得たことによる安堵感は、私をたちまち虜にしたのである。

 引っ越し前では手に入らなかった、広い空間。その隅々まで私と同じ大宮である。その一体化が私を魅了してやまない。

 マイホームというのは、一緒にいるほどに愛着が増していく。そこで同居者に気を遣いながら、自分なりに衣食住を行い、共生関係を保っていくのだ。


 かくして私は大宮を推しているし、活動に大きな喜びも感じている。

 惜しむらくは、この喜びは同じ「大宮」の名を持たなければ得られないこと。同志を探すのはなかなかに大変なのだ……


 今日も私はスーツで出勤をする。


 大きな宮殿……穏やかな時間……


 至福の瞬間。

 マイホームで朝一番にする大便は格別だ。


 そこにいつもの声がする。


「1番ホーム、電車が参ります……白線の内側にお下がりください……」

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