8
リルカは私の魂に、くっきりと跡を刻んだ。深く深く鮮やかに、一番底の核にまで。
そこに余分な私自身を、
新しい私になる。
そうして気づいたのは。
あなたを泣きながら全部食べ尽くしても、絶対に永遠に満たされない、——激しい
イカレた食人鬼——もう私には、時間や常識やありふれた生活とかに、何の興味も持てない。
あなたのいない世界。
あなたは私を狂わせて、ひとりこの世界に置き去りにした。
なんて残酷な、最愛のひと。
時間がどれくらいたったのか——わからない。
遠くの鐘の音のように、誰かを呼ぶ声が聞こえている。
あなたは誰?
私は床に伏せたまま、変容した世界に漂う。
日光がさしているというのに、どうしてこんなに暗いんだろう。
なんでここにいるの? 誰を探しているの?
あたし? あなた? それとも——だれ——だれを、呼んでいるの?
「華月! いるんでしょ!」
私だ。
ああ、私を呼んでいる。
そうだ、未来だけにはこの部屋のことを話したっけ。
「華月! やっぱりいた! ねえ、どうしたっていうの。華月の両親だって、とっても心配して——」
やっぱり未来は親友。駆け寄ってくる足音。お互いにいろんなこと話したね。なんて
ゆっくりと、顔を上げる。
私は笑ったのかもしれない。未来は絶句して後ずさりしたけど。
でも許すわ。愛してるから。
包丁、どこで落としたっけ。
ねえ、未来——。
わたしいま、とってもおなかがすいてるの。
終
晩鐘 連野純也 @renno
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