推し活=活力!

温故知新

推し活=活力!

「はぁ、今週の推しも尊かった〜」


一人暮らしを始めて早数年になる我が家で、仕事から帰宅して夕ご飯とお風呂を早々に済ませ、ローテーブルに置かれているタブレットの前で、推しキャラが出ているアニメの最新話を観終えると静かに合掌した。



「今週は、推しの出番がそんなに多くなかったけど、それでも推しが仲間達と活躍しているシーンは胸アツだったなぁ〜」



先程観たアニメで推しが1番活躍していたシーンを脳内再生して余韻に浸ると、タブレットの横に置いてあるスマホを開いた。



「さて、早速アニメの感想を書こうっと! 最近は、仕事が忙しくて中々リアタイ出来ないけど、推しの尊い部分を誰かと共有出来るのって至福だよね〜。この至福を教示して下さった推しに感謝しなきゃ!」



推しが出ているアニメのOPEDを流しながらアニメの感想を書き終えると、不意にあることに気づいた。



「そう言えば、このアニメのイベントって何時だった?」



スマホの中にあるスケジュール帳を開いて確認すると血の気が引いた。




「げっ! もうすぐじゃん! 最近、意識高い系の上司のお陰で多忙を極めていたから、すっかり忘れてた〜!」



慌てて仕事用の鞄の中にあるスケジュール帳を開いて確認してみると、長い息を吐いた。



「ふぅ〜、どうやらその日はきちんと有給を取ってたみたい。良かった〜、危うく推しの声を担当されている声優さんに直接お目にかかれる機会を逃すところだった。今回は遠征じゃないから、何としても行きたかったんだよね〜」



無事に推しの声を担当されている声優さんに会えることに胸を撫で下ろすとページを捲った。



「え〜っと、有給を取る日の前日は、この人と会う約束だったから、前々日までには資料を完成させて、有給の翌日は、社内プレゼンがあるから、明日出社したら、一緒に組んでいる後輩ちゃんと打ち合わせをして......」



一人暮らし用の部屋にアニメのOPEDがエンドレスで流れる中、口元を引き締めるとスケジュール帳を見返しながら、頭の中で後顧の憂い無くイベントの日を迎える為の計画を立てる。


社内では『営業トップ』と言われて尊敬されている私。

でも、私にとって仕事は、アニメのクールが変わる度に増える推しに貢ぐ為にこなしているにしかすぎない。


だって.......私にとって推しは、生きる活力を与えて下さる、最も尊い存在だから!

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