小説のスキルを上げようと「書き出し祭り」に参加したら、画力が爆上がりした話

天崎 剣

誇張はしてません。読んでみて!

 小説のスキルを上げようと「書き出し祭り」に参加したら、なんと画力が爆上がりしたんですよ。


 ちょっと何を言っているのかよく分からないと思うんですけど、本当のことなので経緯を書いておきます。

 画力を上げたい人は、書き出し祭り開催期間中に挑戦してみてください。



 書き出し祭りというのは、ラノベ作家肥前文俊先生主催で、「小説家になろう」で不定期に開催されている有志企画です。毎回先着100名の参加者で未発表新作の書き出しの魅力を競うんです。

 40字のタイトル、最大400字のあらすじ、2800~4000字の書き出し部分(空白改行込み)を提出、決められた期間内に作品を提出します。作品は25作品ずつ四つの会場に分けられ、匿名で公開されます。

 読者は開催期間中、各会場、魅力ある上位3作品に投票できます。その結果発表まで、作者は匿名を貫きます。

 参加資格は不問。プロアマ混合で匿名参加、新規作品を用意しなければなりません。

 名前が伏せられている分、一切のネームバリューが通用しないガチンコレース。これが楽しくて、過去に6回も参加してしまいました。


(2022年4月23日~第15回書き出し祭りが開催されます。詳しくは、書き出し祭り事務局のTwitterアカウント(@kakidashi_fes)にてご確認ください)



 で、どうして書き出し祭りで画力が上がるかという話なんですけど、まず前提として、私は元々漫画家志望でした。色々あってプロになることは諦めました。

 それでもなんとか物語は作り続けたくて、小説家になろうとカクヨム中心に細々と活動していました。

 長いのから短いのから、ジャンルも様々書いてきましたが、なかなか読まれない。ランキングとは無縁の話を延々書いていました。


 悶々とした日々を送っていたあるとき、書き出し祭りを知りました。

 その趣旨を読んで感銘を受け、小説のスキルをどうにか上げたいと思い、第2回から参加しました。



 書き出し祭りは書き出しを競う祭りなので、絶対書かないであろう苦手ジャンルの克服、連載前の宣伝、物書き同士の交流目的等々、作者側も自由に楽しめます。書き出しさえ提出すれば、その後に連載するかしないか、作者が自分で好きに選べるのです。


 期間中、特に楽しみなのは、やはり感想を貰えること。

 匿名ですから、余計なフィルターなしに読んだ感想が貰えるんです。

 普段は殆ど読まれない、感想も貰えないようなジャンル、作品であっても、書き出し祭りでは読んで貰えて感想までいただけるんです。素晴らしい!


 回を重ねるごとに、感想にも様々なパターンが登場しました。

 Twitterでシンプルに感想を書く、エッセイに纏めて投稿サイトにアップする、マシュマロや質問箱で依頼を受けた作品の感想を書く、全作品の感想を書く……等々。私もたくさん感想を書きました。

 そのなかに、ファンアートを描いても良い作品を募集する、というのがありまして、ここで初めて画力という話が絡んできます。

 私は書き出し祭りの作品にファンアートを描きまくることで画力を上げることに成功した、という訳なのです。



 とは言いましても、いきなりファンアートを描いて上手くなりました! なんてことは全然なくて、ちゃんと順を追って努力してからの画力アップなので、そこは勘違いして欲しくないところ。

 何事も努力の継続がなければ、上達はしないという話からしていかなければなりません。



 私がイラストを描くという趣味を持っているせいかどうか分かりませんが、ウチにはイラストレーター志望の子が複数いて、最近はYouTuberとしても活躍されているさいとうなおき先生を崇拝しているようなんです。

 さいとうなおき先生はポケモンカードゲーム(ポケカ)などのカードイラストや、ウマ娘プリティーダービーのキャラクターイラストなども手がけている方で、YouTubeにはイラストのノウハウを分かりやすく纏めた動画を沢山アップされています。

 その中に、かつてモンスターイラスト中心に活動されていたさいとう先生が、キャラクターイラストへと転向するため、独自に編み出し実践した「3ヶ月上達法」なるものを解説した動画があります。

 3ヶ月、自分の思い描く理想の絵柄を目指し、延々と苦手部分を克服するため描きまくるという、地獄のような方法でした。

 仕事をなさっている方には馴染みもあるでしょう、PDCAサイクルを実行します。


 Plan(計画)→こういう絵が描きたいという目標を立てる。

 Do(実行)→理想像に極力寄せて全力で描く。

 Check(評価)→反省点を書き出す。

 Action(改善)→苦手部分をひたすら練習する。

 終わったら、Pに戻る。

 心が折れる作業を延々繰り返すのです。



 話を少し戻します。

 漫画家志望だった私が小説を書くようになったのは、多分、小説の方が物語を沢山書けるからだと気付いたからだと思います。

 しかし、物語を読んで貰えるまでが難しい。

 書き出し祭りに参加して、どうすれば読んで貰えるか試行錯誤してみました。その結果を踏まえて、通常連載中の作品についても改稿やタイトルあらすじの変更などを行いました。

 ところが書き出しが悪いのか、ジャンルが悪いのか、どうにも読者受けしないのです。

 


 宣伝の場は掲示板や検索サイトから、TwitterなどのSNSへと推移しています。

 近年、小説の宣伝に画像を使う人がぐんと増えました。人間は視覚からの情報を優先して得ようとしますから、イラストでの宣伝は効率的です。

 また、ここ数年、宣伝に使われるイラストのレベルも格段に上がってきました。

 それこそ昔は、自分で描いたイラストや仲のいい絵師さんに描いて貰ったイラストが殆どだったんですが、徐々に外注に変わってきた。SUKIMAやココナラなど、個人が気軽に外注できるサービスが充実してくると、手癖で描いていた程度のイラストを宣伝に使ったところで、埋もれてしまうわけですよ。

 イメージイラストが小説の価値の底上げをすることは分かっています。が、私の絵柄は古く粗いため、どうしても見劣りしていました。

 画力を上げるしかない。

 画力を上げると言えば、「3ヶ月上達法」だ!!

 というわけで、実践することにしました。



 私は絵を本格的に習ったことがなかったので、自分の画力のなさを突き付けられ、半分泣きそうでした。

 私が理想の絵柄として選んだお手本は堀越耕平先生の「僕のヒーローアカデミア」です。

 動きのある絵で、キャラクターが生き生きとしていて、私の理想形だと思ったからです。

 おこがましくも延々とコミックス1巻から模写を始めました。わざと描いたことのない表情を探して描いてみたり、難しい角度を選んで描いてみたり。自分の手が思うように動かず、SAN値がどんどん削れました。

 それでもめげずに、今度はファッションカタログでポーズ模写。更に、アタリの取り方に特化した参考書を買って、ポーズ絵練習。

 これを毎日、家事が終わってから寝るまで2時間くらい使って続けました。

 因みにこの間も、小説の毎週更新は欠かさず続けていました。


 書き出し祭りがこの間に開催されたので、ファンアート描きますと、マシュマロで募集し、ガンガン描きました。

 祭りの開催期間は約半月。その間に、参加作品を読み、イラストを描く。最初にイラスト募集した第13回の時は16作品、14回の時は35作品にイラストを描きました。

 ファンアートを描くという行為は、読み取る力をつけてくれます。作者の意図したイメージを、注意深く読み取り、絵に落とし込みます。大量の依頼を熟すことで、短期間でPDCAサイクルをガンガン回しました。

 PDCAを回すにあたり、1つだけ、確実にレベルアップするための小さなコツがあります。

 いつもと違う描き方を1つ取り入れること。確立された自分の手順を1箇所入れ替えるとか、普段使わないレイヤー効果を試してみる、ハイライトの入れ方、影の付け方を変えてみる……等、本当に些細なことでもいいので、ちょっとだけ変えていくんです。こうすることで、自分にとって1番しっくりくるやり方を探ることも出来ます。

 小説もそうですが、イラストも完成作品をどのくらい量産出来るかが、上達の鍵となります。書き出し祭りは開催期間が限られていますので、期間中に完成させねばならず、完成度と共に速度も求められました。

 もはやブートキャンプです。

 勝手に自分で追い込みました。

 その結果、イラストの急激なレベルアップを達成した、というわけです。



 結局のところ、「3ヶ月上達法」で何が変わったのかというと、これはさいとうなおき先生も動画でおっしゃっていましたが、「目の解像度」ですね。

 物事に対し、より慎重にしっかりと見る目を養うことが出来た気がします。

 全体像を見て、近くを見て、また全体像を見て。そういう目線って、結構物書きにも必要だし、通じるところがあります。


 そして何より、毎日続けること、努力することが、苦ではなくなりました。

 継続は力です。

 努力を続けなければ、力は直ぐに衰えます。


 書き出し祭り参加に加え、「3ヶ月上達法」実践以来、自分を何度も見つめ直し、試行錯誤することに億劫でなくなった気がします。

 フィルムアート社さんの「「書き出し」で釣りあげろ」も拝読しました。

 物語の構成、書き出しの大切さなど、文の方もまだまだ改善の余地があることが分かりました。

 イラストの方もコツコツ描き続け、上達法実践時より更にレベルアップしている実感があります。

 表現方法として、絵と文、両方を極めたいという気持ちは日々強くなっています。


 また、書き出し祭りの季節が来ます。

 挑戦は続きます。

 私は二刀流だと断言できる日が来るまで……!!



<終わり>

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