4、
姉さんはもう覚えていないだろうな。
ぼくがもうこの世にいないということを。
和室のぼくの仏壇にはもう何年も近づいてこないし、お墓にだってもちろん参りに来ない。別に泣いてなんかいないけど、ぼくは忘れられてしまったことがすこしだけ残念だ。
姉さんは生きていてどんどん大人になっていく。不本意なまま。自分の人生をちっとも楽しめないまま。
それならいっそぼくのところにくればいいのに、姉さんはまだ足掻いている。生きることがみっともないことなら、姉さんはかっこつけることをすでに放棄している。
ぼくにはわからない。
どんどん醜くなって劣化して枯れ葉みたいに死んでいくのに生きていく理由が。
ぼくはもう二度とこの世に再び生まれてきたくなんかないから、神さまに天国で会ったらそう頼むつもりだ。
ぼくは浮遊霊だ。
姉さんのことが気がかりで、姉さんのテーブルの席に着いて、いまだに家族と夕食をとっている気になっている。もちろんぼくの分はないけど。
姉さん部屋から出ておいでよ。
生きていたころみたいに、話ができたらいいのにな。
ぼくは見てるよ。いつまで経っても姉さんが好きだよ。
カ・サ・ン・ド・ラ 寅田大愛(とらただいあ) @punyumayo
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