第2話
「突然ですみません!パーティー組んでくれませんか!」
本当に突然声を掛けられた男は首を傾げながら答えた、というか七割方ぼやきに近い言葉を発した。
「えっ…?……いや聞いてました??僕『お疲れ様』って言ったばかりなんですよー?しかも今日だけで二件目って愚痴ってたところなんですけど?」
「2件も3件も大して変わんないでし。さぁさ、ちょっとお姉さん達についてくるでしよ。よっと」
そういうとその男の後ろに回り込み無理やりお姫様抱っこの形で持ち上げカーラはカウンターに連れていく。
「まだ俺は新人なので色々教えてくださいよ、センパイ」
リベリアは先輩、を強く強調する。彼から見たら確かに先輩になるであろう男にオネダリをしてみる。
「ちょっと、男をお姫様抱っこしないでください!」
無理やり連れていかれ、ひとしきり暴れるも、その後自分を抱えている小さな先輩を見てツッコミを入れる。
「この人の方がよっぽど先輩じゃないですか自称の50年の。なんで僕が……。って君見ない顔ですね。新人?それともこの街初めて?というか降ろして?あとついでに座らせて?」
お姫様抱っこで無理やり連れていっていたカーラはカウンターの席に彼を降ろした。
それを見ていたベロニカは茶々を入れながらバルドを袋に詰めていく。
「コルコさん人気者ですねぇ」
「この街自体初めでです。今日来たばかりの新人ですよ」
問わればリベリアは正直に答える。
「別に僕は人気者じゃないですよ…。はいどうぞ」
困り果てた表情をしながらカウンターに戦利品を並べていく。
「で……その来たばかりの人がどうして?そのベテランがいたら初心者から中級者ぐらいまではどうにかなるんじゃないですか?」
その言葉にリベリアは口を開く。
「二人以上居ないといけない依頼でして、安全策を取ろうと、そう考えてましだ」
じっと相手の目を見据えながら伝える。
「まあ私ももう若くないでしゅからね。何があるかあるかわからないでしゅから」
と後方で腕組みしながら何故かカーラは誇らしそうにしている。
「若くない人は音をお姫様抱っこしないと思いますけど……?」
ジト目でカーラをチラ見してから視線を戻し、リベリアの方を見つめる。
「……二人はパーティなんですか?」
「はい。先程パーティを組んだばかりです」
リベリアは素直に答える。嘘をついたところでメリットは無いしデメリットでしかない。
「4人以上推奨のミッションしか現在なくって、それで頭数を。という話なんです」
話を付け加えては袋をカウンターに差し出す。
「だから、お願いします。俺達とパーティ組んでもらえませんか?」
「ふぅん……成程……」
大体を把握し少し悩んだ末、彼はこう切り出した。
「……ちなみに新人さん、住むところは見つけましたか?」
その言葉に住むところを失念していたことをふと思い出す。
「まだ、決まってません。というより、探し忘れてました」
それを聞いた彼はふむふむと何度か頷いてから答えを決めた。
「……わかりました。じゃあ……『住んでくれたら』今回付き合ってもいいですよ」
「『住んでくれたら』とは……?」
疑問符が浮かぶ。
事故物件とか幽霊屋敷とかその手の類じゃないだろうかとふっとよぎる。
そうだろうとそうでなかろうと、住まわせてくれるのならありがたい。
「あ、僕たまに家作ってるんですよ。所謂アパートメント(集合住宅)ですけど」
リベリアの心配をよそにさらりととんでもないことを言う。
なんだかさりげなく凄いことをこの人言ったなぁと思考を放棄した。
「家を作ってる…アパート…凄いですね。」
「なんとなくでやってるだけなんですけどね。いつも街道士用の部屋を一番上と下の階に作ってるんです。その方が間の階に住む人も安心しますしね。………あと隠し部屋とか作りやすい…」
最後のところだけボソリと呟いていたのでそちらを楽しみにしている部分が大きいらしい。要するに半分趣味である。
話を聞きつつ隠し部屋に反応をした。
「隠し部屋があるのは、凄いですね!住みたいです!」
思わず住みますと口にしていた。
「あー……男の子ってみんなそういうの好きよねぇ……」
ふと、カーラが何かを思い出したかのようにつぶやいた。
「なにかあるんですか?カーラさん」
首を傾げてカーラを見る。
「ん?何も言ってないでしよ?どうかしたんでしゅかリアちゃん」
カーラは何事もなかったように後方腕組みを続けている。
「いやいや、なんか聞こえた気がして。気のせいなら大丈夫です。」
ニコリと笑う。
「きっと昔にそういうのが好きな知り合いがいたとかじゃないですか?まぁいいですけど。あ、そうそう。そもそもさっきは報酬を貰ってそれで入口を隠す家具を探しに行くつもりだったのでお2人で選んでいいですよ」
カーラのつぶやきはサラリと流し、住む気満々の様子を見てさらなるワンプッシュを飛ばす。
それを聞いてベロニカはそっと報酬をわたす。バルドがたんまりだ。
「そうですか……あ、選んでいいんですか?こんなたくさんバルドつかって……」
信じられないという顔になりワンプッシュされていく。
「まぁだいたい本棚とかになる気がしますけど。あの本がドアノブ代わりでカチッってなるやつ。」
財布と袋に報酬を入れながらそんなことを言っている。
「あー、それですよね、やっぱり。」
浪漫だな、と呟く。
「………あー、ちょっと席を外すでしゅ。外に居るから必要になったら声掛けて欲しいでしゅ。」
そう言ってカーラは足早にこの場を去る。
「……まぁそれは終わってるから考えるとして……。四人でしたっけ?僕含めてもあと一人数足りませんよ?」
「そうなんですよね。あと一人、どうしましょう……」
静かにまたギルド内を見渡す。
「カーラさん呼びに行った方がいいですかね。話も決まりましたし。」
と、扉の方へ向かおうとする。
「そうですね。三人で次の相談をしましょうか」
彼はその後ろを着いていく。
ダァン!!と盛大に音を立てながらカーラが戻ってくる。
「へいお2人、もう1人連れてきたでしよ!!」
小さな彼女の左肩にはか細い女子が担がれていた。
あうーとぐるぐる目を回しながらプランとお米様抱っこをされている。
「さすがです!カーラさん!でもその子大丈夫ですか?目、回してますけど…」
心配そうにカーラと女の子を交互に見つめる。
「えっと……あの…その子どこから攫ってきたんですか」
コルコはその光景を見てなんとも言えない表情をしている。
「失礼でしゅね、攫ってないでしゅ。すぐに目を覚ますとは思いましゅが…えい」
ぺちぺちと人差し指と中指で女の子の頬を叩く。
「あうっあうっ」
我に返っては何とか左肩から降り、ぺこりと頭を下げる。
「ハザエルですぅ。さっきギルドの前でお話聞いてきたんですぅ」
カーラは静かに(ぬいぐるみと間違われておしり触られた事は黙っておこう)と考えながら話を聞いていく。
「リベリアと言います、よろしくお願いします、ハザエルさん」
「コ、コルコです。…で、どうしてこのぬいぐるみに担ぎ込まれたんですか?」
「ぬいぐるみ扱いとは失敬な。この着ぐるみは由緒正しいエンチャント付きでしよ」
ぬいぐるみと言われ少し不服そうに言う
「可愛くてお触りしたら怒られましたぁ」
えへへーと笑いながら伝えるハザエルに遠い目をするカーラ。
「確かにカーラさん可愛らしいですからね。お触りしたくなる気持ちも分かります。俺がそれやったらセクハラですけど。」
「したらビンタしましゅ。」淡々と告げる。
もっとも、神器を軽々持ち上げるカーラのビンタ
されて首がついていれば良い方だろう。
「あ、それでギルドの前で黄昏てるカーラちゃんを見つけて話を聞いたらパーティに1人足りないって話を聞いたんですぅ、回復職でいいならハジー、混ざりますよう」
「実際足りていなかった役職でしゅ。改めて、カーラでしゅ。よろしくでしゅエルちゃん。」
「そうですね。回復役いてくれたら助かります!」
「確かにこれでバランス取れますね」
「よろしくお願いしますぅ、みんなのジョブってちなみにどこですかぁ?」
「俺は電脳士のピュアです。」
「1st錘巌士で炉坑士2ndでしゅ。まあ、やってる事は走り回ってアイツらをメッタメタにするだけでしゅが。」
「僕は解城士と機孔士です。」
「ハジーは時朽士ピュアですぅ、いい感じですねぇ」
「さて、ベロちゃーん、4人揃ったでしゅよ〜」
とてとてとバーカウンターの方へ駆け寄り申請用紙を受け取ってハザエルへ渡す。
「お疲れ様です!おめでとうございますー!はい、申請書類です」
書類に名前が埋まっていくのを見てニコニコとするベロニカ。
受け取っては自分の名前を書いていくハザエル。
「じゃあ今回のリーダーは…お二人のどちらかでっ」
先に名前を書いて2人の方に差し出す。
「あたしはリーダーってガラじゃないでしゅ。リアちゃん、頼めるでしか?」
「了解しました。頑張ります。」
「ではどちらのヴォリル退治に向かいますか?カペラの20体撃破かポルクスの30体撃破かのどちらかなんですが」
書類を受け取ってベロニカは書類を2枚持ってくる、クエスト受注に使われている羊皮紙だ
「あたし1人なら面倒そうな30の方に喜んで行くんでしゅが他の子も居ますし、今回はカペラの方にしましゅか?」
「そうですね。とりあえず今回はカペラの方にしておきます。」
「かしこまりました。それではカペラ20体受注です!」
バン!と大きなハンコをベロニカは押し、移動費を4人分差し出す。
「こちらを使って移動してくださいね」
「はい、わかりました」
と移動費を受け取る
「それでは行ってらっしゃい!」
魔道王国空虚奇譚 @senngoku
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